内容説明
近代以降、変革と共に多様な形で展開してきた詩歌の世界。明治から平成までの詩を池澤夏樹、短歌を穂村弘、俳句を小澤實が精選、その魅力と真髄を紹介する。
解説=池澤夏樹
月報=北村薫、アーサー・ビナード
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
114
この巻は近代史以下ということで、詩を池澤夏樹、短歌を穗村弘、俳句を小澤實の各氏が選者となり解説なども書かれています。非常に多くの作者を選ばれているせいか一人の作品が少ないのですが様々な観点から楽しめていいのでしょう。とくに詩人では最後の谷川俊太郎、高橋睦郎、入澤康夫の詩は大長編です。短歌もいいのですが、俳句のやはり山頭火や西東三鬼のが印象に残ります。2016/10/06
starbro
103
池澤夏樹=個人編集 日本文学全集全30巻完読チャレンジ第ニ十一弾です。ようやく70%迄来ました。私の人生でこれだけ沢山の詩歌を読んだのは初めてです。ほとんどが初読の詩人、歌人、句人なのでこういう機会は貴重です。石原裕次郎の「錆びたナイフ」が石川啄木にインスパイアされていたり、芥川龍之介の俳句に触れたり等、新たな発見がありました。ただ残念なのは、選考基準が池澤夏樹よりも以前(1945年)に生まれた人が原則のため、現代の若い文学者の作品が含まれていないことです。こんなところにも池澤夏樹の影響が出ています。2016/11/05
スプーン
48
本と言うより「辞典」。今は主に短歌の辞典として日々使っています。選者は穂村弘さん。このシリーズはかなり信頼が置けます。2023/01/22
なお
36
今回は短歌を読む。穂村弘さんが選んだ、正岡子規から三枝昻之までの歌人50人の歌各五首。穂村さんの解説がそれぞれにつく。短歌は三一文字の自由な詩のようにも感じるが、五・七・五・七・七のリズムに沿うような歌に惹かれる。写生の歌もあれば、社会との関わりによる告白や自我の表現などの歌もあり時代性も持つという。宮沢賢治「いざよひの月はつめたきくだものの匂をはなちあらわれにけり。」 佐々木幸綱「サキサキとセロリ噛みいてあどけなき汝を愛する理由はいらず」 伊藤一彦「おとうとよ忘るるなかれ天翔ける鳥たちおもき内臓もつを」2025/08/19
ぐうぐう
36
『日本文学全集』第29巻はタイトル通り、近現代の詩歌が収められている。詩を池澤夏樹、短歌を穂村弘、そして俳句を小沢實がそれぞれ担当し、選んでいる。錚々たる詩人の名詩を読んでいると、ベストアルバムを聴いているとき特有の息苦しさを覚えた。ベストアルバムは、そのアーティストの代表曲だけが選ばれて収録されているので、聞き応えがありすぎて休む間がないのだ。だから、息苦しくなる。それと同じ気持ちにさせられた。ところが、短歌となると、とたんにその息苦しさがなくなるのが不思議だ。(つづく)2016/09/29