内容説明
なぜ進化論を否定するのか? なぜ「大きな政府」を嫌うのか? なぜポピュリズムに染まるのか? あからさまな軍事覇権主義の背景は? 歴史をさかのぼり、かの国に根づいた奇妙な宗教性のありかたを読み解き、トランプ現象やポピュリズム蔓延の背景に鋭く迫る。ニュース解説では決して見えてこない、大国アメリカの深層。これがリベラルアーツの神髄だ!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
SOHSA
39
《購入本》トランプ政権誕生から何かと注目を浴びるようになったアメリカの政治と思想。日本人はとかく英米あるいは欧米という括りで、アジア諸国との対置としてアメリカを見がちであるが、実はそれは大きな誤りであることを本書は教えてくれた。アメリカ建国の歴史、そこから生まれる国民の思想、気質、宗教と政治の関わり、反知性主義とポピュリズム等々、いずれも本書では明快に読み解き読み手にわかりやすく提示してくれている。トランプ政権を誕生させたアメリカ国民の思考が、すっきりと腑に落ちた。2017/11/27
Kentaro
38
アメリカの論理では、この疑似三段論法が常識として受け入れられている。つまり、「この世の成功」と「神の祝福」はイコールで結ばれる。この根本的な確信を支えているのは「人の声=神の声」という考え方だ。ラテン語ではvox populi, vox deiという。ローマ時代の言葉で、キリスト教的な起源があるわけではない。人は神の声を直接聞くことはできない。だからそれを、人の声を通して聞くのです。人びとが称賛や是認をしているのなら、それは神の是認と同一視されるわけだ。2022/06/30
kei-zu
31
宗教的背景から米国の政治的特性を説明する。宗教学者である著者でなければ、きわどいと感じかねない語り口もある。 世俗的な成功が神の恩寵の証明という考え方は、同国に独特のもの。一方、それは人生の不遇は神に見捨てられたという判断を導きかねず、それを回避するために自らが「極端な不公正」を被っているという被害意識が生じるという。 英国のEU離脱は、トランプ選出と併せて論じられることが多いが、方向性は真逆で「撤退」であるという指摘も興味深い。 ポピュリズムの説明から、我が国の将来に向けられた指摘も考えさせられる。2021/04/29
さきん
27
反知性主義のセクト派の説明が分りやすかった。いわゆる意識高い系で、エリート牧師が教会で説教するくらいでは生ぬるいとして、屋外で教会派を批判しつつ大衆へ説教するスタイル。ここから巡回セールスマンが生まれてきたそう。トランプ大統領の宗教背景も書いてあって良かった。2018/02/11
まると
24
「反知性主義」の森本先生が企業経営者向けに行った講義録。宗教という補助線を引くと見えてくるアメリカの特異な論理をわかりやすく解説しています。終盤は、アメリカや日本を含めた現代社会の権威の失墜、正統の弱体化という現象に持っていき、「正統vs異端」論でカッコよく締めくくっている。批判を恐れず正統であることから逃げるな。力ある正統と異端が正面からぶつかり合い、世代交代し回転していくことが生命力を維持する必須条件だ。だからこそトップは正統への気構えを持て、と訴えかけています。現代社会の病巣を憂えた魂の講義でした。2023/07/09