- ホーム
- > 電子書籍
- > 教養文庫・新書・選書
内容説明
敗戦直後、戦争への道を自らの手で検証しようとした国家プロジェクトの全貌。1945年11月、幣原喜重郎内閣が立ち上げた戦争調査会。多数の戦犯逮捕、公文書焼却など困難をきわめるなかおこなわれた40回超の会議、インタビュー、そして資料収集。日本人自らの手で開戦、敗戦の原因を明らかにしようとしたものの、GHQによって1年弱で廃止された未完のプロジェクトが明かす「昭和の戦争」の実像。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yoshida
93
対米戦争の敗戦。その敗因は、そして戦争回避は出来なかったか。日本は自身の手で総括をしていない。東京裁判で戦勝国から一方的に裁かれたのみ。しかし敗戦後の幣原内閣で総括は進められていた。それは戦争調査会。政財軍民の各界から様々な人物を集め部会毎に約40回の会合が持たれた。しかしソ連やGHQ左派により戦争調査会は結論を出すことなく解散させられた。2016年に公開された資料から会の様子を読み解く。私見だが対米戦争回避は日中戦争の講和、独ソ戦開始前の状況ならば有り得たと思う。米国側はWW2参戦機会を狙っていたので、2021/08/08
rico
35
戦後間もなくこのような調査会が立ち上がっていたことは驚き。悲惨な結果に終わった原因を、政治・文化・軍事等様々な側面から分析し、未来の礎としようとした。連合国側の思惑で頓挫したが、この取組みが形になり共有されていれば、日本の姿はずいぶん違ったものになっていたのではないか。委員の1人が言っている。「敵が悪いが、負けたから、皆悪いことを日本が背負って居るということで、本当に後悔している人は少ない。」70年以上経った今もこの状況は続いていてるような気がする。たまたまだけど、12月8日に読了。2018/12/08
金吾
34
○戦争調査会の調査内容が広範かつ詳細であり、興味深い内容でした。特に各部会における論争は面白かったです。しかし戦争の起源の調査の初っ端が平野義太郎氏のような変節漢というのは驚きました。また馬場恒吾氏のソ連批判的思考はもっと外交筋がいうべきだったと思います。軍部特に海軍の増長、無責任や戦略的な考えのない政府は、誰でもわかる目先に懸命になり、長じては地位ではなく自分が偉くなったと思い、ノーブレスオブリージがなく国家を考えられないことから起因していると考えます。今に至る民族性でしょうか?2024/04/07
Akihiro Nishio
30
戦後直ぐに当時の首相幣原により、政治外交、軍事、経済、思想文化、科学技術の5部会から、どうして戦争が起きてしまったのか、どこで引き返すことができたのかを研究し、将来の平和に貢献しようという大プロジェクトがあった。それが戦争調査会であった。改めて見ると多くの分岐点があり、戦争は必然ではなかった。さらに残念なのは軍事の部会が開かれなかったこと。結局、軍部が当時どうしてそうした判断をしたかがわからないので、最も重要な部分は謎に包まれたままである。最近まで、この調査資料が非公開であったというのも残念。2017/12/14
skunk_c
29
前段は戦争調査会の顛末、後半は残された資料から戦争への道と終戦がなぜ遅れたかについて著者が論考した内容。前半は会の存在を知らなかったので興味深かった。後半は調査会の資料の内容には興味を引かれたが、そこから著者が引き出した部分は最近の通説と大きく変わるものではなく、ちょっと期待はずれ。とはいえ、この辺の歴史をコンパクトにまとめたものとしては悪くはない。サイパン陥落という絶対国防圏崩壊後に戦争を続けたことによる犠牲の増大に言及はあるが、なぜその段階で終戦工作に臨まなかったのかの分析はない。そこが問題と思うが。2017/12/23