内容説明
高校生の広海は、祖父である大和尚の仕事を手伝っている。 ある日、同級生のサチがお寺にやってきた。 ふたりは次第に親しくなるが、彼女は母親との関係に苦しんでいて――東北の町を舞台に、人生につまずいてしまった人たちが再び歩き始める姿を描く、凛としたやさしい物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おしゃべりメガネ
190
やっぱり穂高さんの作品は本当にココロが穏やかに癒されますね。お寺の息子「広海」と幼馴染みの女の子「サチ」の二人の関係を軸に人のあらゆる悩みや状況をヒューマニティ満載に綴ってくれます。中でも印象的だったのはパニック障害の話で、改めてその症状や状況を理解することができました。人が思い悩み、ふとしたトキに'あちら'の世界(死後)へ渡ろうとするのを防ぐ、不思議な能力を持つ広海のキャラにココロうたれます。人それぞれに理解し難い、あらゆる状況の中でもしっかりと'生きる'ことを静かながらも主張するステキな作品でした。2017/06/24
相田うえお
160
★★★☆☆17110 穂高さん2作目。なぜか気がつくと読み進んでるというタイプの興味深い作品。(理数系出身の作家さんなんですか?やけに分かりやすい説明をする方ですね。)内容は、心の問題をテーマにしつつも人との繋がりや優しさ,愛を感じる話でした。人の心ってデリケートに出来てますからね、そりゃトラブルが発生する事だってありますよ。複雑な世の中にある複雑な人の心だけに想定外の外因から突発的エラーだってありますよ。そんなときクスリはあくまで補助であって、本当に人をバグフィックス出来るのは人なのかもしれませんね。2017/11/12
まさきち
90
不思議な力を持った広海と大和尚を糸として貫かれながら、各章が少しずつ重なっている短編集。そして各章の主人公は皆心に傷や重しを抱えており、ふとした瞬間に命を落としかけるが、広海の力に寄ってこの世界に戻ってくる。その際に交わされる会話がなんとも優しく、素敵だった印象が強く残った一冊でした。2020/04/27
えりこんぐ
53
苦しみを抱えた人たちがたくさん登場するが、救いがある優しい短編だった。同じ町で少しずつすれ違うだけの間柄でも、その一瞬が誰かの救いになっていたりする。和尚さん一家が、とても温かくて素敵だった☆ 2016/06/03
はつばあば
53
1500冊目が「かなりや」。生きにくい世の中になって来ました。一息つく事もせずに馬車馬の如く走り続ける若い人達が溢れた今、心にゆとりが無くなり、はけ口にするのは弱者に。私達は選ばれた人間ではありませんから、何の取り柄もなく、しんどい時にはしんどいと言えるのです。「ちょっと助けてよ」と一言発するだけでいいのです。円谷選手のように潰れる前に、家族に、友達に一言言葉があったら。命とは自分だけの物ではありません。皆の支えで大人になってきたのです。虐待やイジメは大人が蒔いた種ではないでしょうか。数学に物理が夢に。2015/05/18