内容説明
阿佐子は、背中に薄いピンク色の羽を隠し持っているような子供だった。少女から女へ。儚いほど完璧な美、存在自体が放つ官能の気配、そのすべてが周りの人々を狂わせる。男たちは、峰蜜色にきらめく肌に惑い、阿佐子の表現する愛情はなんであれ、彼らの猜疑心を刺激した。あまりにも美しき破滅の愛の物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
309
絶世の美女、阿佐子を主人公に彼女の9歳、17歳、22歳、26歳、30歳、35歳を綴った連作短編集。それぞれの短篇では阿佐子に翻弄される男たちが描かれるのだが、中核をなすはずの阿佐子には著しく個性といったものが欠如している。圧倒的な美貌であることは、かくまでも個性や人格を喪失させるものだろうか。また、結末は通常ならば逆の結果になるはず。それをあえてこのようにしたところに小説としての工夫が見られるものの、必ずしも成功しているとは言い難い。解説の皆川博子氏も喝破しているが、本作はあくまでも過渡的な作品だろう。2018/06/01
遥かなる想い
115
阿佐子という儚い程の美を持った一人の女性の9歳から35歳を、それぞれの時にかかわった男たちとのできごとを短編連作といった形式で描いた本である。小池真理子の作風のうちでは、『恋』の系統に近く、阿佐子の外見の美よりも、他人の視線を通しての内面描写に力点をおいている感じがする。 それにしても、小池真理子はこの手の ストーリーの運び方はうまい。阿佐子という女性の孤独と、彼女にかかわった男たちの戸惑いのような雰囲気が 見事に漂ってくるようである。2010/06/26
Take@磨穿鉄靴
60
なんだか可哀想だね。阿佐子。美しいだけでまわりの男が勝手に浮き足立って勝手に神格化して。本人自体に悪意や計算が無いだけに可哀想。ただ普通に幸せになりたかっただけなのにね。35歳でお話は終わってるけどまだまだ周囲を惑わし続けるんだろうなあ。美人は美人で大変なんだね。もし阿佐子が近くにいたら自分も翻弄されちゃうのかな。それならそれも楽しいかもね。その後は地獄だろうけど。久しぶりに本を楽しめた。★★★☆☆2018/11/08
けいこ
34
誰が見ても美女と評する木暮阿佐子。9歳から35歳までの阿佐子をその時々で出会う男たちが語る連作短編集。息を呑むほどに美しく妖艶で、立場を忘れて深みに嵌る男たち。阿佐子という人物そのものや心情が全くわからないまま、ラストに出会う男によって阿佐子は破滅の道を辿る。男は何故この結末を望んだのか。それほど阿佐子に猜疑心を抱いたのか。また阿佐子も、何故この男に唯一惹かれ、彼の望みを叶えたのか。その辺りの唐突さが拭えない。とは言え、小池さんらしい美しい文章に引き込まれてあっという間に読了。2023/10/17
ミツツ
29
美しいって最強だと思っていたけど、そうじゃなのね。2022/01/04
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