内容説明
生活者そして知識人としてのデザイナー12年間のクロニクル。
長年にわたりブックデザイナーとして活動し、デザイン、写真、映像についての批評でも知られる著者が、2005年から2016年までの12年間にわたって日常や社会の諸相に巡らせた思索の軌跡。
『at』『atプラス』『市民の意見』『十勝毎日新聞』という三つの媒体に寄稿した連載エッセイと読書アンケートを中心に収録する。
経済や情報のグローバル化を背景に、人々の価値観や公共性の枠組みが大きく変容していった時期に書かれたこれらのエッセイは、出版にかかわるデザイナーならではの同時代批評であり、デザインについて語らないデザイン論でもある。
市場経済のデザイン言語から離れ、私たちの足下から立ち上がる思考の地平。
「カラーのプレゼンをチョイスするだけの編集者は、編集者なのではなく消費者なのだと思う。(中略)
ひとは消費者であってはいけないと思う。むろん、ひとは消費者でなければ生きていけない。
消費者でありながら消費者であることをヤンワリと拒む生き方を探したい。」
(本書所収「かしこい消費者」より)
目次
タイポグラフィの薄さ
点に留どまる
読書日録
二〇〇五年上半期読書アンケート
アンケート わたしを/がつくった雑誌
沈黙の一拍
DTP時代の「なにを」「どう」
暗がりの消滅
二〇〇五年読書アンケート
デザインを漂流させる
ほか
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いやしの本棚
15
鈴木一誌氏についての予備知識さえなく手にとったが、とても「面白」かった。何気ないエッセイという佇まいを装った、洗練されたデザイン論。一つの仕事を続けてきた人は、「一つの事を知ったために凡ての事を知りつくしている」、との印象を得た。郡淳一郎氏の編集後記が素晴らしい。美しい本が好きだけれど、本の美しさとは何か?とは、ほとんど考えずにきた。美しい本がなぜ美しいのかを知らず、何気なく手にとることができる"有り難さ"について思う。図書館の公共性を、今わたしたちは手放そうとしているのだということを自覚しながら。2018/02/06
akios
0
もはやどこまで読んだか何回読んだかわからないまま何度も繰り返し読んでいる。2021/05/10