内容説明
古代史研究家であった妻、加奈子から、父の日記を手渡された荻葉史郎。父の春生は「自分はまちがいなく南北朝の末期にも生きていた」と記し、また、燃えさかる炎のような瞳をもつ女王、卑弥呼のもとにいたことをも詳細に記録していた。壮大な歴史の渦に呑み込まれた父と息子の軌跡を描く、連城ミステリーの精華。巻末に連城三紀彦「最後のインタビュー」も収録。
目次
二章
三章
終章
特別収録〈最後のインタビュー「わが人生最高の10冊」〉 「男と女の物語」に魅せられた作家生活 連城三紀彦
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
61
吉野の山中から京都への道行、そして邪馬台国で卑弥呼と共にあった日々。大震災、空襲とあるはずのない記憶を持つ男の物語は手記によってさらに過去へと遡る。ただ古来より邪馬台国ミステリの主流である場所を特定するという事より、何故男がその記憶を持つのか。という事に主眼が置かれており、それが現実的な落し処に持ち込まれるのは紛う事無きミステリだった。ただ登場人物全てが現実よりも観念の世界に生きているという風で、それが著者らしく薄明の中の世界を覗き込んでるよう。読み終えた時、何となく『ドグラ・マグラ』を連想させられた。2018/05/26
かめりあうさぎ
23
日記を主軸にしての上巻を上回る迷走妄想三昧。でも普段から手記モノ結構読んで変に鍛えられちゃってるので、オチは中盤で分かっちゃったかなー。かなり強引な印象だけど、ミステリとしての落とし所は納得でした。文章の美しさは流石。そして巻末の「最後のインタビュー」では、連城先生の「わが人生最高の10冊」が紹介されており、これは一読の価値ありだと思いました。これを最後に遠い所へ旅立ってしまったのがとても悲しい。ということで、なんだか本編とは関係ないところで読後感が切なくなってしまいました。2018/01/15
かわうそ
21
冒頭から広げまくった大風呂敷をきっちり畳みきれているかというと多少疑問はあるけれど、数々の趣向を盛り込みながら流麗な文章と独特のロジックで少しずつ壮大な物語の全体像を明らかにしていく剛腕はさすが。面白かったです。2017/12/06
Ribes triste
10
出口の見えない時間と記憶の迷路の中を、行きつ戻りつ、さまよい歩くような物語でした。2017/11/05
犬養三千代
9
父親であり、祖父である。 狂って妄想としか思えない、春生。 邪馬台国を扱った推理小説はあまたあるが秀逸。 卑弥呼の花のシーンは連城三紀彦でしか描けないように思う。 特別収録の対談で連城三紀彦の人となりが少し覗けたのも良い。2017/12/28