内容説明
西洋古代哲学専攻でありながら、その学識は西洋哲学史全般、ひいては現代思想にまで及んだ希代の碩学・神崎繁。政治と哲学の境界に立って、最期の際まで続けた思索をついに刊行。プラトン、ホッブズ、カール・シュミット、ハイデガーなどを縦横無尽に論じる文章は、まさに「これが哲学だ」というべきもの。巻末に付した中畑正志「「解題」のかわりに」、熊野純彦「思想史家としての神崎繁』も必読!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
みのくま
5
30年続いたペロポネソス戦争敗北後のアテネは30人政権による恐怖政治が敷かれ、寡頭派と民主派による泥沼の内乱が勃発した。そして激化する内乱に終止符を打つ為に「アムネスティー(悪の記憶の禁止)」による和解が成立する事になる。本書はWW2後、変名でカール・シュミットがアムネスティーについて言及した論文を紹介する所から筆を起こしており大変興味深い。そして、プラトンは著書「メネクセノス」において意図的にアムネスティーに対する言及を避ける。そこにはプラトンの考えるポリス国家における内乱の構造にヒントがあるのだという2023/12/24
hryk
2
どれだけの読書量があればこれほどのものが書けるのかと思いつつ、単に読書量を増やすだけではこれは書けないとも思う。アリストテレスの能動知性の系譜をヘーゲルとマルクスによる労働概念の展開とハイデガーの存在論に引き寄せる補論は再読。初読時にはピンとこなかったが再読して問題設定の独創性とそれを支える文献提示の手付きの鮮やかさに心を打たれる。こういうものを書いてみたいと思うけれど、安易に不在を主題にしてはならないという中畑正志の指摘には頷かざるを得ない。2019/01/09
ニッポニテス的遍歴
1
☆=3/5 プラトンとハイデガーが、そのテクストの中で敢えて言及しなかったことについての考察。 文体が錯綜していて意を汲み取りにくい箇所も多かったが、なんとか読み切った。 読み進めるごとに著者が思想史上に見出した「隠れた系譜」の全体像がおぼろげながら見えてくる(ただ、著者が注目するテーマを個人的にはあまり重要とは思えず、その意味でノリきれなかった)。 「努めて言及しまいとする事」にまつわる心理的固着について語り起こすというスタイルは四方田犬彦『回避と拘泥』に似ている。 2021/02/12