内容説明
建設省のキャリア組・梶谷の経堂の家が鴉の群れに襲われた。そしてなぜか執拗に梶谷だけが狙われた。TVニュースで事件を知った匠淳之助は、群れを率いているのが、匠が餌を与えている鵜のクロであるのを確認した。現場で知り合った警視庁の徳田刑事が数日後、匠を訪ね、五年ほど前に陵辱されて殺された母娘がクロという名の鵜を飼っていたと告げた(「妖魔」)。人間の狂気と滅びを描く西村文学作品集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
63
短編集なのだが、総じて動物の絡んだ話が多い。白眉は何と言っても「廃墟」。現在のアメリカに存在するような富裕層のコミュニティが虫の大量発生を切っ掛けに崩壊していく様は、まるで長編を読んでいるような密度。他にも邪悪なごんぎつねを思わせる「賢者の宴」や、鴉に復讐される男を描いて胸がすっとする表題作等、総じて著者の動物に注ぐ目は暖かい。翻って人間はとことん酷い目に遭うのも特徴。島に自然を取り戻そうとする主人公に救いが全く訪れない「幻の海」等終始鬱だし。動物に対する愛と人間に対するニヒリズムが面白い一冊でした。2023/08/18
ドント
3
狐が化かし、男ひとりが浜を作らんとし、虫がウジャウジャして、カラスが喋って猫がニャーンする動物短編集。著者の愛犬ちー子についてのエッセイつき。エッセイを除いて100%暴力的な濡れ場があるのには辟易するが、とにかく文章が闊達で圧縮ぶりが凄い。特に自治意識高い系の新興住宅地がドえらいことになる「廃墟」はわずか70頁。鼠大量発生長編『滅びの笛』の濃縮還元版でパンパンに膨らんでいて大変なものだった。表題作は怖そうだけど「こんにちは」「おなかすいた」「ころすぞ、ころすぞ」などと喋るカラスの仇討ち話でホッコリします。2023/04/11
忍者千乗りの門戸開放
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別管理していた読了リストより転記