内容説明
“本書が語るのは国民国家崩壊の物語である”。民族主義の台頭、資本家とモッブの同盟、難民と無国籍者の出現、人権の終焉…全体主義に連なる帝国主義とは。
目次
第5章 ブルジョワジーの政治的解放(膨脹と国民国家;ブルジョワジーの政治的世界観;資本とモッブの同盟)
第6章 帝国主義時代以前における人種思想の発展(貴族の「人種」対市民の「ネイション」;国民解放の代替物としての種族的一体感;ゴビノー;「イギリス人の権利」と人権との抗争)
第7章 人権と官僚制(暗黒大陸の幻影世界;黄金と血;帝国主義的伝説と帝国主義的性格)
第8章 大陸帝国主義と汎民族運動(種族的ナショナリズム;官僚制―専制の遺産;政党と運動)
第9章 国民国家の没落と人権の終焉(少数民族と無国籍の人々;人種のアポリア)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夜間飛行
207
ブルジョワの価値観が政治に無秩序に侵入したのが帝国主義の始まりなら、行き先は無限の膨脹と消費(人や物の蕩尽)であり、それを可能にするのは無限の権力蓄積だ。人や土地を呑みこむ支配構造は人種意識を呼び起こす。独では血の絆とロマン的英雄崇拝が融合、仏では階級崩壊への反動から優越人種の観念が先鋭化。英では植民地の官僚統治が偽善と無法支配を広げた。一方モッブが主導権を握る中東欧の種族的ナショナリズムは、墺や露で個人の内面にまで浸透した。私達はいつ人権を失うか判らない。現に失った人々の多さと惨状に暗澹たる思いだった。2021/11/21
ケイトKATE
26
第2巻は全体主義への要因となった帝国主義について考察している。19世紀に稀にみる繁栄を迎えたヨーロッパ諸国(主にイギリスとフランス)は、本国で過剰となった資本の捌け口として、外国への貿易に向かった。次に、貿易で都合よく利益を上げるために植民地支配を行った。さらに、野心家や社会の屑(本書で表記)達が外国へ渡り、植民地を膨張させ帝国主義が築かれた。やがて、帝国主義を推進した国では植民地支配について、支配する側の正当性や優秀性の主張として人種主義が現れる。2020/11/14
いとう・しんご
11
第2巻は「全体主義」。19世紀の汎ゲルマン主義、汎スラブ主義についての「「ツァーリズムはしたがって汎スラヴ主義者の目には、神の全能の地上における直接的告知たる不可思議な原動力のシンボルと映ったのである」p235はプーチンの本音を、また、戦間期における難民、移民の大量発生に伴う人権の終焉は、我が国の入管における外国人死亡事件の多発を考える上で、大きなヒントを与えてくれる。2022/10/28
ブラックジャケット
11
汎ゲルマン主義、汎スラブ主義という一国の範疇を超えた種族的大陸帝国主義が、大きな利潤を生んだ海外帝国主義を追いかける構図となり、人類平和を遠ざけた。アフリカの帝国主義的分割が進み、アジアを飲み込み、海外帝国主義は膨張の極みに達した。人種の優劣が形となって現れる。ナチスは汎ゲルマン主義のライバルである汎ユダヤ主義を絶滅へ追い込むため、独国籍を剥奪、無国籍としても、どの国からも引き取りがないことを証明し、国外から再度取り込み、絶滅収容所へ送った。この悪魔的構造を人権、難民、無国籍と論旨を拡げつつ解釈する。 2018/04/12
Yasutaka Masuda
8
2巻のテーマは帝国主義であるが、帝国主義の説明だけでは20世紀の歴史を説明するのに言葉が足りないため、国民国家、ネイション、ナショナリズム、民族などの概念が詳細に説明されている。この辺の議論はかなり込み入っていて、理解するのが難しいが、最近の民族とネイションの考え方の基礎的なものらしいので得られる知識は非常に多い。国民国家のシステムは、国民主権が基本概念にあるのだから、それを植民地のような被征服民族に押しつけるのは、そもそもに矛盾があって機能するはずがないという論は単純明快で有無を言わさぬ納得度がある。 2018/10/08
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