内容説明
佐藤愛子九十歳・奇跡の話題作、待望の文庫化!
老作家・藤田杉のもとにある日届いた訃報――それは青春の日々を共に過ごし、十五年間は夫であった畑中辰彦のものだった。
「究極の悲劇は喜劇だよ」
辰彦はそういった。
それにしても、どうして普通じゃ滅多にないことばかり起るのか。
当時の文学仲間たちはもう誰もいない。
共に文学を志し、夫婦となり、離婚の後は背負わずともよい辰彦の借金を抱え、必死に働き生きた杉は、思う……。
あの歳月はいったい何だったのか?
私は辰彦にとってどういう存在だったのか?
杉は戦前・戦中・そして戦後のさまざまな出来事を回想しながら、辰彦は何者であったのかと繰り返し問い、「わからない」その人間像をあらためて模索する。
枯淡の境地で、杉が得た答えとは。
『戦いすんで日が暮れて』『血脈』の系譜に連なる、かつて夫であった男と過ぎし日々を透徹した筆で描く、佐藤愛子畢生の傑作長編小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ココ
34
「老いた人間が耐えなければならないのは、肉体の衰えだけではない、言葉にならない孤独感の重たさであることが、いまわかりました。」九十まであと二年、こうしちゃいられない、と書き始めた本作の終盤の作者のひと言が、胸に突き刺さる。読んで良かった!2018/09/02
やどかり
22
夫であっても所詮他人。他人を理解し切ることなどできない。不可解な男として受け入れたことで、佐藤さんの中で昇華できたのかな。私の中では、元夫の借金の申し出を受けたり、怪しげな桑田を面白がる佐藤さんの行動も不可解ではあった。2022/05/18
禁酒パンヤ
9
佐藤さんの半生の自伝的要素が大きい小説ですよね。何度も夫の事を書いたって記してあったけれど、できる女がダメンズに尽くしてしまうといういうんでしょうか。魅力的だけど、運がなくて、計画性がなくて、典型的なダメンズ。私は絶対無理!ですが。ただ晩年の佐藤さん、仲間に皆先立たれて、救いようのない孤独を感じるその寂しさが、シーンと伝わってきました。年をとるという事は切ないものですね。2018/05/25
桐葉
4
元夫が亡くなってもなんら感慨がわかないと言いつつこれだけのことを書けるのだから,やっぱり人生に大きく影響を与えたのだと思う。年を取るということはこういうことなのかとも思った。2020/07/10
ぴっちゃん
3
この人(登場人物たち)は、誰の事(モデルとなった人たち)かなぁ・・・?と思いながら読んだ。なぜ辰彦のような男にひかれ、また許すのか、やっぱりわからないなぁと思いつつ。2019/03/12
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