内容説明
良人(おっと)との離縁を望み最後の助けを求めて女が駈け込む「縁切寺」として名高い鎌倉の東慶寺。門前にある餅菓子屋の倅(せがれ)で忍びの末裔でもある平左十手の使い手・和三郎が、寺役人の野村市助、公儀御庭番の息女紀乃とともに、夫婦の事情の背後に隠された意外な真実を鮮やかに暴き出す。表題作「おねだり女房」を含め全4編。(講談社文庫)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
baba
30
読メさんで知り、井上やすしの「東慶寺花だより」をイメージして手にするも、鬼畜を思わせる人物や殺伐としたシーンの連続、人を貶めている展開で読むのが辛く何度途中で止めようと思った事か。やっと最後に寺役人や門前の菓子屋の息子和三郎の温かさや人情が伝わって来た。2017/06/01
onasu
18
井上ひさしさんの「東慶寺花だより」が、雰囲気のいい作品だったので、こちらもどうかと手にしたのですが…。 表題作「おねだり女房」は、大店の天真爛漫な嫁が姑と諍いを起こす度に、東慶寺に駆け込んでくること7度。その度に舅と夫が迎えにきて、わがままを叶えてきたが、次には夫だけが現れて…、という趣向に富んだ小品でした。2017/04/11
タツ フカガワ
7
女性から離婚を申し出ることができる鎌倉の縁切り寺「東慶寺」の門前にある餅菓子屋の息子和三郎(じつは代々東慶寺守護の忍びの者)と、寺役人野村市助が関わる夫婦間のトラブル。できれば穏便に元の鞘に収まれば、と思うふたりの門前の風景はじつに穏やかだが、持ち込まれる離縁の背景はおどろおどろしい。そのギャップが面白い。なかでも最後の「雨の離れ山」は剣劇、恋路、ほろりとするところもあって、盛り沢山の一編でした。2017/10/25
ikyo_01
4
1作目が買えずこの2作目から読む。 寺の御用宿というのがあったんですね。そして寺役人の仕事も。 市助さんと そのお人柄にほれ込んでいる門前の餅菓子屋の親子。「縁切寺」に駆込んでくる女の人の裏の事情を探り、とどろどろしたものにどっぷり浸かってしまう立場の割には 暖いものが感じられ、読後感が良かった。 1作目もぜひ読んでみよう。2010/04/03
ペキンパー
3
短編集なんだけど、全ての話が 本筋→一転して違う話→二つの話を融合させて着地 というパターンで貫かれている。、この様な展開は創作するのに凄く苦労するはずなのに、それをしれっと描いてしまう宮本昌孝の技量に感服仕り候。 2010/04/03