ちくま新書<br> 紛争地の歩き方 ──現場で考える和解への道

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ちくま新書
紛争地の歩き方 ──現場で考える和解への道

  • 著者名:上杉勇司【著者】
  • 価格 ¥1,100(本体¥1,000)
  • 筑摩書房(2023/04発売)
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  • ISBN:9784480075505

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内容説明

殺しあいをしてきた人々は、どのように仲直りをするのか。闘いを通じて増殖され蓄積された憎しみ、悲しみ、怒り、憤りを当事者たちはどう処理するのか。和解を促すうえで、第三者のどのような手助けが効果的なのか。カンボジア、東ティモール、インドネシア、アフガニスタン、スリランカ、フィリピン、キプロス、ボスニアなど世界各地の紛争地で、現地の平和に貢献する活動や研究を行ってきた国際紛争研究者が、紛争の現場で見て、感じ、考えたことをもとに和解の物語を綴ってゆく。

目次

はじめに──見て、感じ、考える旅/本書から何が得られるか/内戦後の和解の旅/川下りの旅/コラム1 蚊との戦い/第一章 カンボジア──和解の旅の起点/1 和解の背景/内戦の概要/和平プロセス/権威主義的体制の確立/特別法廷/移行期の正義/2 和解の旅/旅の始まり/国際選挙監視活動/権力に抗う覚悟/除隊兵士支援/足を失った元兵士/ポルポト派から逃れた難民/コラム2 現地の生活の知恵/3 和解の景色/正義を追求する道/誰と和解すればいいのか/過ちをどう伝えればよいか/紛争地を歩く知恵1安易に土産を手渡すな/第二章 南アフリカ──和解を考える旅/1 和解の背景/アパルトヘイトの概要/和平プロセス/構造的暴力としてのアパルトヘイト/真実・和解委員会/2 和解の旅/和解の成功例の実態/黒人居住区「タウンシップ」/心のなかの見えない壁/コラム3 南アフリカのワインと郷土料理/3 和解の景色/政治的妥協の産物/異なるスタートライン/差別を語る言語の束縛/紛争地を歩く知恵2ヨハネスブルグではUberタクシーを使え/第三章 インドネシア──民主化という名の和解/1 和解の背景/スハルト開発独裁/独裁から民主化へ/独裁後の正義の追求/コラム4 苗字のない名前/2 和解の旅/独裁末期の教育現場/父の仇との和解/独裁者スハルトの功罪/人質解放交渉/コラム5 テロリストとの交流/3 和解の景色/民主化という名の和解の回避術/うやむやにされた軍部の責任/紛争地を歩く知恵3リスク管理を徹底せよ/第四章 アチェ──和解に優先する復興/1 和解の背景/内戦の概要/イスラム法(シャリア)/日本の対アチェ外交/スマトラ島沖大地震と和平気運の高まり/インドネシア政府の目論見/ヘルシンキ和平合意秘話/仲裁者の立ち位置/コラム6 フィンランド流サウナの入り方/2 和解の旅/イルワンディとの密会/なぜ独立を諦めたのか/末端のゲリラ兵/体制派の人々の声/裏切り者/3 和解の景色/既得権益の再分配/政治的和解を促した選挙制度/和解の理想形/少数派のなかの少数派/紛争地を歩く知恵4入国ルートの手間を惜しむな/第五章 東ティモール──和解の二局面/1 和解の背景/東ティモール略史/インドネシアの軍事侵攻と抵抗運動/一九九九年の住民投票/和解の二局面/国連の平和構築支援/インドネシアとの和解/受容・真実・和解委員会/二〇〇六年の政治・治安危機/2 和解の旅/重大犯罪に対する特別法廷/受容・真実・和解委員会の公聴会/コミュニティ内の和解/コラム7 国連警察官が遭遇した危機/3 和解の景色/社会に潜む根深い対立構造/対立を助長した言語政策/政治と治安部門改革/政治主導の和解と金による解決/紛争地を歩く知恵5現地に到着したら高台から俯瞰せよ/第六章 スリランカ──多数派勝利後の和解/1 和解の背景/内戦の概要/多数派シンハラの驕りと恐れ/和平仲介の失敗/和解の地政学/2 和解の旅/日本の仲介努力の特徴/和解を阻む要因/タミル・エリートの本音/内戦の犠牲者たちの声/敗者となったタミルの虎たち/タミルの虎の元幹部の証言/コラム8 コロンボの市場で/3 和解の景色/スリランカ式解決法/炭鉱のカナリア/紛争地を歩く知恵6テロリストと闘うな交渉せよ/第七章 ボスニア・ヘルツェゴビナ──民族という火種は消せるのか/1 和解の背景/多民族国家ユーゴスラビア連邦/内戦の概要/スレブレニツァの虐殺/デイトン和平プロセス/旧ユーゴスラビア国際戦犯法廷/2 和解の旅/サラエボを目指す車旅/戦時下のザグレブ/念願のサラエボ入り/橋は再建されても民族の壁は高い/コラム9 平和のためのジャーナリズム/3 和解の景色/分断による平和/平和強制の後の和解の課題/殺しあった隣人同士の和解/戦争の記憶を残すことは和解を妨げないのか/紛争地を歩く知恵7安易にパスポートを手渡すな/第八章 キプロス──分断から和解は生まれるか/1 和解の背景/キプロス略史/内戦の概要/国連キプロス平和維持隊/2 和解の旅/緩衝地帯を往来する/南北「国境」を越える/解決よりも現状維持/民主制の難しさ/南北共存に向けた取り組み/両民族が共有する文化遺産/コラム10 退役軍人宅にホームステイ/3 和解の景色/別れて住むということ/紛争地を歩く知恵8土産物の売子には注意せよ/第九章 ミャンマー──軍事政権との和解/1 和解の背景/内戦の概要/多民族国家の難題/ロヒンギャ/民主化の兆しとクーデター/2 和解の旅/アジア最後のフロンティア/束の間の平和/仏教門徒ネットワークとZ世代/なぜロヒンギャは差別されるのか/人道支援原則/コラム11 居酒屋にて/3 和解の景色/軍事政権と民主化勢力の和解/和解を妨げたもの/鍵を握る政治的和解/紛争地を歩く知恵9許可されている境界ギリギリを目指せ/終章 現場で考える和解への道/1 見聞録を振り返る/カンボジアの和解/南アフリカの和解/インドネシアの和解/アチェの和解/東ティモールの和解/スリランカの和解/ボスニア・ヘルツェゴビナの和解/キプロスの和解/ミャンマーの和解/2 和解を阻む障壁/紛争の要因としての権力闘争/和解を阻んだ強硬姿勢/民族や宗教の違いは和解を妨げるのか/和平のための理論/軍の文民統制を確立する/3 和解の処方箋/和解への道筋/権力闘争の穏健化と民衆の不満解消/和解の第一歩/民主主義は和解を促すのか/国際社会の役割/日本の取り組み/4 和解の旅の終わりに/過去からの解放/和解の終着駅/あとがき/参考文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

よっち

34
殺しあいをしてきた人々は、どのように和解するのか。世界各地の紛争地で、現地の平和に貢献する活動や研究を行ってきた国際紛争研究者が、紛争の現場で見て、感じ、考えたことを綴る一冊。内戦状態だったカンボジア、人種差別があった南アフリカ、独裁からの民主化したインドネシア、対照的な道を辿ったアチェと東ティモール、多数派が勝利したスリランカ、多民族ゆえに難しいボスニア・ヘルツェゴビナ、分断するキプロス、軍事政権のミャンマーなど、背景も違えばその過程や結末も違っていて、分かりやすい正解もないだけになかなか難しいですね。2023/06/13

奈良 楓

18
【良かった】● 2023年4月刊。新書とは思えない濃度の本でした。 ● 正義の追及か和解かの問題。 ● 紛争当事者の双方、エリート層/軍部/民衆など、9地域を現地取材をもとにし多層的に分析した本。 ● 紛争当事者の一方が勝利したスリランカでの和解の道、など専門家ならではの分析が興味深かったです。 2024/02/16

さとうしん

11
東南アジアを中心に世界の紛争地での様々な和解のありようを見ていく。和解後も黒人と白人が交じり合わない南アフリカ、民主化と経済成長で和解後の不満を抑え込むインドネシアといったように、逆説的な事例が目立つ。そうしたありようから、我々が韓国人や中国人と歴史認識問題で和解するには、あるいは中国人が香港人と和解するとしたらどのような方法を採ればいいのかといったことを考えさせられた。2023/06/27

しゅー

9
★★★「地球の歩き方」in 紛争地域 。世界各地の紛争について学び、各地各様の「和解」への道のりを著者と一緒に考察していくことができる。もしも善悪二元論で物事を捉えて「悪」を罰して終わり(応報的正義)であったなら、どんなに楽だろうか。対立してきた者同士の間に国境があるのならともかく争いが終わったあとでも同じ街や村のなかで両者が一緒に日常生活を送らなければいけないとしたら。ある部分では過去を水に流し、利益配分を巧く調整し、そんな辛抱強い営みが必要になってくる(修復的正義)。現地の空気感を伝えるコラムも良い。2024/01/08

とりもり

5
紛争の理由は数多あれど、無辜の市民が犠牲になるという構図だけは変わらない。宗教に紛争の理由を求める風潮があるが、それはあくまで理由の一つに過ぎないことが、この本を読めばよく分かる。和解が少数派の中の少数派の権利を考慮しないことが多い、多数派もより広域で見ると少数派に転落する、など問題を複雑化させる要因には事欠かない。紛争を終わらせるには過去の罪を赦すか、徹底的に少数派を抑え込むかしかない、そして、少数派に手を貸すということは紛争を長期化させて犠牲者を増やす結果になるという現実が哀しい。★★★★★2023/11/05

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