内容説明
フィッツジェラルド、ヘミングウェイ、フォークナーらと同時代に生まれ、1929年、本書発表後、一躍アメリカ文壇の寵児となったウルフ。長身で冷蔵庫を机に立ったまま執筆した、10年で5万冊を読破した等、様々な逸話に彩られ、37歳で夭逝する。本書は主人公ユウジーンの誕生から両親との確執、兄の死、恋愛の悦びや青春の苦悩を越え成長していく孤独な魂を、詩情溢れる描写で情熱的に謳い上げた自伝的小説。
目次
第一部
第二部
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
こうすけ
20
学生時代にハマったジャック・ケルアックが影響を受けた作家ということで、10年くらいの積読を経て読んだ。しかし、かなりキツい…。ケルアックのような疾走感はないし、アルタモントという街についての脱線した描写がただただ苦しい。『百年の孤独』に近い感じもあるが、あんまりはまらなかった。シェイクスピア論議のところやユウジーンの個人史は面白いので、下巻に期待したい。2021/02/24
Hotspur
3
1929年作品。場所はノースカロライナの架空の町アルタモント。途中で世紀が変わる。ユージーンが主人公なのだが、上巻を読む限り、父オリヴァー・ガント、母エライザ、長兄スティーヴ、次兄ルーク、三兄ベン、姉ヘレンなど、個性的で癖のある家族の面々のエピソードが次々と描かれ、頻繁に使われるカタログ的描写(ヒトやモノを表す名詞の羅列など)と相俟って、ラブレーのように恐ろしく豊穣な世界を創り出す。名作であることは間違いないが、古めかしく独特(「チェーン店」が「連鎖店」とか)な大沢訳が入手できる唯一の訳であるのが惜しい。2021/07/16
たけべ まい
0
20世紀初頭に活躍した米作家、トマスウルフの処女長編。文庫上下巻の上巻である本書では主人公ユージーンの少年期の終わりまでが一家のサーガとともにに描かれる。作者の自伝的小説であるようだが、定まらない視点と文体は叙情的で、どこか一歩引いた客観性と強い訴求力を併せもつ。2021/12/12