内容説明
「どうです、われらの仲間に入りませんか」──こう誘われて、浪人・立花数馬はうなずいた。その仲間とやらは、瓦版を刷って、世の悪人どもの正体を天下に広めることを目指しているらしい。実は数馬、父は謀に嵌められ、妹は嬲りものにされて、ともに伊丹屋に命を奪われていたのだが、彼らの標的がその伊丹屋であることを知ったのだった。数馬は、旗本の菱沼源三郎や親方の宇兵衛、売り子の新助など、七人の仲間に加わり、瓦版造りを始める。そして、七人の志=「七志屋権兵衛」という屋号による、悪事の一部終始を晒した瓦版が世に放たれた。果たして剣を抜かず、筆の力だけで悪人を退治できるのか──!?世間の手で報いを受けさせる、正義の勇士たちを描く痛快シリーズ、開幕!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ロックイ
5
今まで自身が読んだ時代小説では悪役か脇役でしかなかった瓦版屋。その為か、あまり良い印象が残っていませんでした。そんな瓦版屋をヒーローにした世直し物という事で興味を引かれ手に取りました。読んでるこちらまで嫌悪感に苛まれるほどの悪党ばらを剣で成敗!ではなく、徹底した裏付けと情け容赦なく暴きたてる精神力を持って筆で成敗する展開は、ジャーナリズムの真髄ではないでしょうか。胸糞悪い悪事ばかりなだけに終わってもスカッと爽快とは残念ながらいきませんでしたが、シリーズ化して欲しいと、是非追いかけたいと思いながら読了です。2017/03/05
マカロニ マカロン
4
個人の感想です:A-。田沼期の江戸で悪役人と悪商人がグルになって企んだ(現代風に言うと)集団強姦事件や詐欺事件を7人の瓦版屋集団が鉄鎚をくだす、但し剣ではなく筆でという痛快なストーリー。江戸時代は士農工商の身分がきっちり分かれていたが、現代も所得格差が急激に開いているが、そんな中、一部の役人や企業が不正な蓄財や無責任な行為を起こし、世相が似てきているようにも思える。時代劇の小説のいいところは勧善懲悪でそんな悪人をきっちりやっつけてくれるところにあるのだろう、本作も読んだ後の痛快感が格別だった。2017/01/15