内容説明
ピエタのクラスにやって来た黒髪の転校生トランジ。「私の近くにいるとみんなろくな目に遭わない」学校で次々に殺人や事故が起きて……!?(「ピエタとトランジ」)14歳の夏、高熱を出した少女エイプリルは後遺症で一日に一回嘘をつかなければ死んでしまうという――(「エイプリル・フール」)ブラックで残酷、不気味で怖いけれど、ファンタジックでキュートな10篇の作品たち。新しい才能が迸るポップ&ダークな短篇集です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
buchipanda3
109
何ともシュールな味わいの小説集。それでいて人間の自我が見せるリアルな切なさが見え隠れしていて、何とも言えない読後感が残った。語り口はキュートなんだけど何だか迫ってくるような文章に気持ちが追い立てられている感覚も。表題作はホルマリン漬けの子猿が出てくる。そんな描写は読みたくないのについ語りに引き込まれて読んでいた。女の子は家族の話をした時に意識の変化を見せる。語りで自分を取り戻したのは子猿ではなく女の子の方なのかも。「ピエタ~」は最後の場面がいい。あとは「アイデンティティ」「ある遅読症~」もハマった。2020/03/08
aquamarine
86
芥川賞作品に苦手意識のあったころに受賞されたというタイミングの悪さだけで手に取ってこなかった藤野さん。読んでびっくり!なんてこと!もっと早く読めばよかった。ものすごく好みだった。このちょっと離れたところからさっくりと鋭い切れ味で切り落とされていく文章は、読み手を誘い込み突き放し…癖になります。特に表題作と「ピエタとトランジ」は最高。これは過去作遡って読まなくちゃ。そしてこの「ピエタとトランジ」を長編に仕立てたという新作もとても楽しみです。ああ、幸せ。2020/03/08
ケンイチミズバ
79
悪いものをもっている人って現実にいる。彼が異動してきたとたん株価急落、事前情報なく集金先でドアに張り紙があり社長が逃げました、誰かが続けて亡くなる、社屋の外壁にひび、傘を持ってきたのに降らない。神がかり的に不幸を招く死神トランジと一緒にいることが気が気でならないのに、彼女の顔面にアイスを垂らしてしまい「死ね」と言われて「お前が死ねよ」と言い返したピエタの気の強さ、笑ってしまった。AKBの中でいちばん好感を持っている歌がうまくて鼻っ柱が強そうなさやねがイメージされた。パンツ見えてるよと言われて見せてんだよ。2017/07/10
papako
77
お気に入りさんたちのレビューで。楽しかった!なんだかすごいお話を読んでしまった。この作家さんの頭の中にはたくさんの世界がつまっているんですね。ひとつひとつの短編の数だけ世界が広がっていました。すごく丁寧に突然始まる新しい世界についていくのに必死でした。着地点が気にいると、すごく好きだと思え、そうじゃないともやもや。でもそのもやもやも味わい深い。『アイデンティティ』好きだわ。『今日の神霊』写真の歴史に絡めた世界観とmicapon17のギャップがすごい。本には無機質でいていただきたいと切に願います。2018/07/25
itica
71
新刊の「ピエタとトランジ」を読む前に、二人の出会いが描かれているこちらを読んでみた。短編集なのに残酷で容赦ない感じがインパクト大だ。表題作の「おはなしして子ちゃん」は可愛らしいタイトルに反して、えげつないいじめの話だし、「ピエタとトランジ」も半端なく人が死んでゆく。日常の姿を装った狂った世界が妙に落ち着かず、それでいてクセになりそうな作品群だったな。 2020/04/03
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