内容説明
あのとき、ふたりが世界のすべてになった――。ピアノの音に誘われて始まった女どうしの交流を描く表題作「愛の夢とか」。別れた恋人との約束の植物園に向かう「日曜日はどこへ」他、なにげない日常の中でささやかな光を放つ瞬間を美しい言葉で綴る。谷崎潤一郎賞受賞作。収録作:アイスクリーム熱/愛の夢とか/いちご畑が永遠につづいてゆくのだから/日曜日はどこへ/三月の毛糸/お花畑自身/十三月怪談
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
476
「愛の夢」は、よく知られたリストの曲だが、「とか」をつけてしまうところが川上未映子らしいところ。そんなら「とか」って何やのん?と言われても本人も困ってしまうのだろうが、本来完結すべきところで完結せずに、あれこれと思考を巡らせているうちに、どこかに漂着する―それが川上未映子かと。7つの短篇は多かれ少なかれ、何かを喪失する物語でもある。そして、その背後のはるか向こうには3.11の震災が見え隠れもするのだが。巻末「十三月怪談」の最後には、奇妙ながらもほの明るい光が見える。解説もなしという潔さも川上未映子らしい。2017/06/30
ハッシー
234
40代女性のどこか人生を諦観した雰囲気が漂う。 静かに孤独感が語られている。物語が急に好転することも、都合よく主人公が助けられることもなく、ただ淡々と日常が過ぎていく。そんな日々のもの悲しさを綴った作品。2017/01/31
しんごろ
186
表紙とタイトルに惹かれて衝動買い(^^;)何気ない日常生活をここまでさりげなく物語にするのは驚きですね!後々、どんな話だったか忘れそうだけど…(^_^;)『十三月階段』は印象に残りました(^^)ただ、平仮名が多くてちょっと読みづらかったかな(^_^;)2016/05/05
しゅう
121
7編かるなる短編集。テーマとして地震が通奏低音のように流れている。オープニングの「アイスクリーム熱」は短いが、コミュニケーションの断絶と孤独を描いた佳作。文体がまるでレイモンド・カーヴァーのようで錯覚した。続く表題作はリストの「愛の夢」をモチーフにしたもの。最後に口づけを交わすところが印象的だった。最も印象に残ったのは最終話の「十三月怪談」。ここでは生と死が取り上げられている。これは一応ハッピーエンドと捉えてもいいのだろうか?とにかく読み応えはあった。相変わらず川上さんの文体は淀みなく、美しかった。2026/05/13
ちゃちゃ
121
自然の脅威を前に、私たちは現実の生が一瞬で崩れ去ってしまう恐怖を経験した。3.11後に発表された短編を含む本作は、生の不安に満ちている。今私たちが生きていることの脆さ、不確かさ。ならば、今ここで感じるものこそが確かな生の感触なのではないか。隣人のピアノの曲が完成したときに交わした口づけの高揚感、「愛の夢とか」。別れた恋人との叶わなかった約束後の淋しさ、「日曜日はどこへ」。生死の境を超えた愛と喪失の哀しみ、「十三月怪談」。言葉にすると瞬時に色あせてしまう感覚や感情を、息苦しいほど鮮やかに切り取った短編集だ。2019/10/22




