内容説明
オーストリア/ハプスブルク帝国の危機~ナチスの脅威に向き合い、それを乗り越えようとした孤高の言論人、カール・クラウス。彼は、戦争やナショナリズムにおいてメディアの果たす役割、戦争の背後にある経済的利害等を鋭く指摘。彼の思想と行動を読み解くとともに、「世紀末」「第一次世界大戦」「ファシズム」という三つの時代における、オーストリア/ウィーンの政治思想・文化的状況を浮き彫りにする。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
Lieu
0
著者は政治思想史の専門だが、精神分析のフロイトとクラウス、ヴィッテルスの入り組んだ三者関係を論じた章が、私には面白かった。個人主義者・平和主義者クラウスには、一方で相当に反動的な言説もあった。晩年には、反ナチスとはいえオーストロ・ファシズムを掲げるドルフスを支持し、左派の読者からの信頼を失う。研究対象の思想家のリベラルさやアクチュアリティを強調したい研究者ならば隠しておきたいであろうこうした事実を隠さず、しっかり事情を説明しつつも批判すべき点は批判する姿勢が、研究書として大変素晴らしいと思った。2023/12/02




