内容説明
NHKドキュメンタリーで放送された、英語版翻訳者デイヴィッド・ミッチェル氏を訪ねるアイルランド旅行記、二人の対話(Q&Aと往復書簡)、そしてテレビで執筆風景が映されていた短編『自閉症のうた』を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しいたけ
120
ミッチェルさんの「直樹君にとって言葉とは何ですか」との問いに対する答えが「青い海のようなもの」。みんなはこの海で自由に泳いだりもぐったりして遊ぶのに、自分はいつまでも一人ぼっちで小舟に乗り、揺られ続けていると。それは自分を見失うほどの恐怖や絶望感とまで言う。それなのに、東田さんが紙に置くその言葉は、暖かく美しく、そして海のように深い。「言葉を覚えるために本を読むのではない」と言う。感情を揺り動かし豊かな時を持つ幸せ。東田さんの言葉は東田さんにしか紡げない。樹々の青葉から溢れる陽の光のようだと、いつも思う。2017/09/20
美登利
97
対話と往復書簡はこれまで東田さんが他の本でも書いていた内容と少し被る部分もあったように感じましたが、創作「自閉症のうた」はとても良かったです。言葉にならない。上手く伝えられないけれど、当人はこんな風に感じてるんだという部分を小説の形にしてあって、主人公は女の子だけど東田さん自身でも有るんだなと思います。2017/08/01
あじ
58
投げ掛けた言葉に返答がなくても、耳を傾けてくれていると感じていた─。コミュニケーションとしての音声言語を持たず、心とは矛盾した感情を表出してしまう重度の自閉症。その葛藤と混乱で渦巻く胸の裡を当事者である東田さんが、二編の短編と対話を持って自閉症の世界感を塗り替えた。彼らを理解できる側でありたい、心新たに出発した。2017/08/21
ムーミン
47
途中から頭で考えるよりも心で感じることを大事にしながら読みました。簡単な言葉の中に、深さや美しさを感じました。2022/02/09
かおりん
32
著者は重度の自閉症。「自閉症の僕が跳びはねる理由」の英訳者との交流、対話、短編小説。著者の思い、空想の豊かさに驚く。「自閉症のうた」は自閉の加奈子が、入院中に知り合った重度肢体不自由の高雄くんに様々な感情を持つ。もがく加奈子の心の動きにつらくなる。最後生きている楽しさ、命の美しさに気づく。気持ちを解き放てた加奈子は強いなぁと思った。2021/07/16