内容説明
江戸時代に空を飛ぼうとした男がいた!
近江国友の鉄砲鍛冶の一貫斎は旺盛な好奇心から、失敗を重ねながらも反射望遠鏡を日本で最初に作り上げる。
「日本のダ・ヴィンチ」と呼ばれた男、稀代の発明家の生涯。
直木賞作家、山本兼一さんの遺作が文庫で登場。
江戸での訴訟に勝ち、国友村に戻った一貫斎は、江戸滞在中に請け負った反射望遠鏡の制作に夢中になった。
レンズの制作で、失敗を重ねる最中に、墨をすらないですむ「懐中筆」や油を足さない「玉燈」等を発明し、潜水艦も模索する。
後年日本のダ・ヴィンチと呼ばれる鉄砲鍛冶の生涯を描いた傑作時代職人小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
サンダーバード@読メ野鳥の会・怪鳥
69
世の中の森羅万象の理を解き明かせばできぬことはない。水中を進む船も人が空を飛ぶことも夢ではない。夢は必ず叶うもの夢はまことにするもの。単に腕の良い鉄砲鍛冶に留まらず、発明家としても名を成した国友一貫斎。こんな人物が江戸期の日本にいたのですね。それを知ることができて良かったです。★★★+2017/03/31
あつし@
15
良い本に出会えた。幸せな気持ちになった。解説(映画監督田中光敏氏)を読んで涙が出た。映画はどれも観ていないが…。解説、亡くなった作者の思いも含め、まさに「感涙禁ジ得ズ」の一書。2017/05/31
塩崎 周司
10
鉄炮鍛冶の夢は果てしなく広がる。水中往来船(潜水艦)、空を飛ぶ船(熱気球)。これらは未完成であるが、江戸末期の職人の発想とは思えない素晴らしさだ。そして、極め付きは苦節15年の歳月をかけて完成させた天体望遠鏡。オランダ製をはるかにしのぐ精度であった。科学する心、諦めない職人魂。中学生に読んでほしい一冊だ。2017/05/09
Y.yamabuki
7
江戸時代、月は愛でるだけではなく、一部の人は表面の観察までしていたのは驚き。この時代海外から容易に情報を得られなかったからこそ大きな夢を持ち、自ら工夫と努力を重ねていく一貫斉のような人が生れたのかもしれない。彼が加賀で教えた人達に望んだこと(ぜひとも自分たちで知恵の絞り方を学んでほしい。)が、印象的。夢に向かってすぐに始められなくても、他の事をしながら考え続ける。始めてからも、行き詰まった時は一旦中断して出来るところから始める。なるほど。2017/04/20
まいど
5
職人気質は職人の家に生まれたからってあるもんでもありません。 でも親の背中を見ていれば、流れている血を考えればやはりカエルの子はカエル、と言うところでしょうか。 見本があったとはいえ今で言う天体望遠鏡を作り出すそのバイタリティーには頭が下がる思いです。その場にいたら色々と仕組みを教えたでしょうかね〜。 さて、山本作品ももう少しです。何を読むか考えどこですね。2017/04/14