内容説明
その日、人形作家・上原眸(ひとみ)の元に届いたのは、四十年来の友人・大江茜(あかね)の訃報だった。「あたくしの美意識」に基づき、八十歳を目前に自殺を遂げた茜。母である前に一人の女として愛欲に忠実に生き抜いた彼女の人生を、その手記や家族からの手紙、そして自らの過去を重ねて振り返りながら、眸は女の生と性の深淵に思いを馳せる。九十歳を過ぎた著者が円熟の筆で描く、爛然たる長編小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
100
女性の生と性が美しく官能の色を放っていました。美意識から80歳を目前に自殺したということからして衝撃を受けます。恋に生き、夫と離婚してまで自分の中にある「一人の女」という姿を大切にした茜。その姿からは、妻であり母である以前に女であることを感じさせます。手記や手紙から見える生と性の深淵。それは女性であるが故に誰もが心の奥底に抱えているものだと思います。歳を重ねても女性であり、生と性の間で揺れ動く生き方は永遠であるに違いないでしょう。2016/10/06
扉のこちら側
58
2016年985冊め。タイトルが気になって手に取った。八十歳を目前に自死を選んだ友人・茜を、自分の人生を振り返る人形作家の眸。「女の生と性」の話であり、手に職を持ち一人で生きることだったり、不倫関係のことだったりというエピソードがある。女にせよ男にせよ、自分の心や体を誰かに支えてもらいたいと思うのは当然の感情である。できるならそれが、誰かを悲しませることのないものだといい。 2016/11/13
バーベナ
4
『いのち』を読んだ後なので、モデルは彼女かな?と想像しながら。茜のようなねっとりした魅力を持つ女性が近くにいたら、ちょっと正気を保つ自信はないなぁ。なんだか大竹しのぶさんが浮かんできた。2019/02/04
rinrinkimkim
3
酒井7。お手紙やりとり型物語で、文末の良いお手本でした。役にたつなぁ。本書は著者91歳の作品。ややくどい感があるもののそれも味と取るか?登場全員がサセ子です。70代でも頑張る姿は命を燃やすかのようで痛々しくもあり。この世代がいくら日々喜びあってても少子化に一役買うわけでもないしなぁと物語の感想ではないことばかりが湧いてくる不思議な一冊でした。瀬戸内作品はこれで終了。酒井さんはこの著者をどうとらえていたのだろう?2022/03/03
ひとみ
2
初 瀬戸内寂聴。 女性の『生と性』について描かれていた。 美意識を保つために、あくまでも一人の女性として自ら生涯を閉じた茜。 その思いは理解し難いけどいつまでたっても女は女なんだな…と思った。2017/08/14