内容説明
それは、私が小学校二年生のある日のこと。同じ学童に通う香奈枝ちゃんが、お姫さまみたいな人形を持ってきた。金色の巻き毛に、青いガラス目。丸みを帯びた桜色の頬に、控えめな微笑み――えもいわれぬ美しさを持つ彼女の名前は『ミーナ』。そんな彼女との出会いが、すべての不幸の始まりだった…。五体の人形にまつわる、美しくも哀しいノスタルジック・ホラー。【目次】ミーナちゃんは許さない/サマーはなおらないで/あくじき少女/エセルが映したから/さよならクローディア
目次
ミーナちゃんは許さない
サマーはなおらないで
あくじき少女
エセルが映したから
さよならクローディア
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夢追人009
138
ホラー系ミステリ作家・長谷川夕さんの5体のおにんぎょうが女性達に災いを為す血も凍る怖さの連作短編集。本書の中で質の悪い極悪極まりないお人形は第1話の死を呼ぶミーナと第4話の死の映像を映すエセルですね。第2話のサマーは機械仕掛けでまだ可愛らしい方ですし、第3話の名前なし人形と第5話のクローディアはヒロインを解放してくれるだけましな方ですね。全てが破滅的でなく第2話と第5話には救いと希望が漂います。人間の憎悪が人形と反応して最悪の結末に至るダークファンタジーの達者な書き手の著者は今後も大いに期待できますね。 2019/05/16
佐島楓
78
なぜ、ひとのかたちをしているものは、それだけで怖いのだろうという本質的な疑問を一所懸命考えてしまった。前作より物語の技量は格段に上がっているため、怖いなぁと思いながらもページを繰る手が止まらなかった。今後もこの路線で伸びていく作家さんだと感じた。 2017/02/06
HANA
58
人形怪談短編集。器物百年を経て、とは言うものの人形はその人を模した姿から、格別怪談と相性がいいと思う。日本人形、球体関節人形、果ては藁人形。そんな中、本書の主役となるのは五体のビスクドール。子供が絡む話は暖かな内容が多いものの、それ以外の話は嫌さが漂ってきて実にいい。特に「あくじき少女」等はアレとアレを主題にした話で、好みにぴったり。思わず快哉の声を上げてしまいましたよ。同様に「エセルが映したから」も心の黒い部分を覗きこまされるようで実に嫌感たっぷりで満足。読み終えた時、あなたの部屋の人形は大丈夫ですか?2017/05/29
ちょろこ
56
どれも終わり方の雰囲気が良かった、一冊。五体の人形の短編集。おにんぎょうというだけでも不気味で怖いのに、この作家さん雰囲気たっぷりの文章のおかげで更に怖さが倍増。どのお話も、問いかけたり、余韻を残すような雰囲気たっぷりの終わり方がぞっとするけどこれまたいい。ミーナさまとエセルさまのねっとりじっとりが忘れられない。おにんぎょうというものは人の心の奥底にじっと視線を注ぎ、耳をすませているのでしょうか…。2017/03/29
眠る山猫屋
52
五体の呪い人形様方の物語。敬語を使いたくなるほど凄惨なミーナ様から始まるのだが、とにかくミーナ様がおっかなかった。ほぼ呪怨並の悪意の発露。トラックに擂り潰された死に様なんて・・・。このお人形様方は、決して人間の悪意に負けないくらい、存在感が真っ黒だ。クローディアが語るように、人形自体に悪意はあまり無いのだろうが。物語としては、エセル様のお話がジワッと怖くてお気に入りです。2017/06/12