内容説明
ソクラテス哲学の根本を伝える重要な対話篇、初の文庫版で新訳が登場! 『アルキビアデス大』または『第一アルキビアデス』と称されてきた『アルキビアデス』は、一個人としての「この私」と捉えられる「自己」を認識すること、さらには「人間一般」を認識することを目指し、魂と徳の探究に乗り出す。短篇『クレイトポン』では、その魂と徳の探究への疑問が提示され、ソクラテス哲学の極限に向かって対話が進行していく。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
YJ
5
この著者が真作か偽作かはまだわからないらしい。わりと読みやすく、クレイトポンはすぐ読めた。無自覚こそが諸悪の原因であり、最も非難されるべき無知。自分自身を知ることは節度であること。2017/05/21
みのくま
4
のちにアテナイのみならずギリシア世界を混乱の渦に巻き込む事になる若きアルキビアデスとソクラテスが対話する「アルキビアデス」。ソクラテスの産婆術は徳の勧めではあるが、具体的な徳の積み方を教えてほしいと魂の叫びで終わる「クレイトポン」。両作品とも小品で偽作説もあるが、どちらもかなり重要な作品である。そしてどちらも不穏な雰囲気を残しつつ作品は閉じられる。実際にアルキビアデスはソクラテスの期待を裏切り、またソクラテス刑死の遠因にもなる。ソクラテスの哲学は何だったのか、という本質的な問いが両作品の根底に流れている。2024/08/10
ごうた
4
古典的BL対話篇。ソクラテスとアルキビアデス、両者の対話に現れる相思相愛がなんとも微笑ましい。各々の台詞に「愛の告白」が頻出するのだ。また、自尊心丸出しのアルキビアデスに自己制御を諭す大哲学者の論法、それに対する青年の機転や、時に見せる従順さも観察していて面白かった。どんな場面で、状況でこの対話が交わされたのかが気になる。それを想像すること自体にロマンがあるけれど。そして、こうした2人の深い仲を知ってこそ、シンポジウムの終盤にアルキビアデスが乱入する『饗宴』ラストが更に面白くなるに違いないと思った。2018/02/08
Yoshi
1
アルキビアデスでは徳と汝自己を知れ、というデルポイの神託に対していったいどうすればいいのかを考察。 自己認識を主体に話をしていくのだが無知の知を暗に示していたり、ハイデガーの道具分析の大本のようなことを言っていてその先にある国家論にも繋がるような自己と自己に属すものについて語っていた。 クレイトポンでは徳を求めるのに目覚めたとして、一体それが何か、という問題決起をクレイトポンがソクラテスにして即終わる。 ソクラテス的議論の限界を示すような作りでなるほど、と。 また違った話で読んでおいて損はないと思った。2020/07/06
xuxu
1
偽作の疑いがある二作。『アルキビアデス』では、自分を売り込むソクラテスに確かに違和感。ただ解説を読むと真作だと頷ける部分もある。実在のアルキビアデスについて知らなければと思った。『クレイトポン』では、重大な問題提起が。プラトンを通してある程度ソクラテス思想に親しんだ今、最も気になっていたことがクレイトポンによって問われている。しかもそれに対するソクラテスの返答はない。ソクラテスなら何と答えたのか。知りたいが、きっと明確に答えはしなかったのだと思う。各人が答えを求めて悩みながら生きるしかないのだろう。2019/05/10




