内容説明
中年女性の屈折した心理を描く「蟹」他6篇。
外房海岸を舞台に、小学一年生の甥と蟹を探し求めて波打ち際で戯れる中年女性の屈折した心理を描き、第49回芥川賞を受賞した「蟹」。
ほかに、知人の子供や道端で遊ぶ子供に異常な関心を示す、子供のない女性の内面を掘り下げた「幼児狩り」。
夫婦交換による男女の愛の生態を捉えた「夜を往く」、「劇場」など、日常に潜む欺瞞を剥ぎ取り、その“歪んだ愛のカタチ”から、よりリアルな人間性の抽出を試みた、筆者初期の短篇6作を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ehirano1
79
標題作の「蟹」について。本作はただ蟹を探しに行く話。そう、ホントにそれだけだったような印象です。「蟹」が何かのメタだとは思うのですが、本編に蟹の死骸は登場しても生きた蟹がそもそも登場しないことに加えて、蟹は山に居るとかで、もうメタなのかどうかも疑問です。本編は芥川受賞作なのでわかる人にはわかると思います。私もいつの日かわかるようになりたいです。2024/05/24
かめすけ
2
河野多恵子2冊目。幼児狩り、蟹をまず読み、その他の作品は順繰りに。河野の作品はおおよそ、男児への執着(フェティシズムと呼べばよいのだろうか)、サドマゾ的な性行為、マジックリアリズム、母への恐れからくる嫌悪の組み合わせで出来ているが、どれも退屈することはなく、楽しんで読んだ。上記の要素を考えると異色なのが「塀の中」で、戦争を主題としている。子が死ぬところで物語が終わるのかと思いきや、ラストシーンには、これが戦争なのだとその現実を突きつけられるような気がした。男児への執着の場面になると、語り手が主人公を→2023/07/20
スライムチャン
1
自分もいずれなる妙齢女性の、屈折した心の動きが流れ込んできて苦しくなったむ(´・ω・`) アブノーマルなプレイ?が好きなのはよく分からなかったけど、自分の親のそれより前の時代の、今とは違う女性に対する世間の厳しい眼差し、そして今も同じかもしれないそこに漂っている常識や普通、苦しいね……🥺🥺🥺 今の自分は幼子とおばさんのちょうど真ん中あたり(ちょっとおばさん寄り)で、これから自分がどこへ振れていくのかが怖くもあり、不謹慎ながら楽しみでもあるような。楽しみだと思えるのは、こんな作品があるから。感謝だむ。2025/03/31