内容説明
世界が見守る中、サダム・フセインの像がバグダードの中心で破壊された2003年4月。掠奪者の一群がイラク国立博物館を襲う。近くにアメリカ軍の戦車隊が配備されていたにもかかわらず、掠奪は阻まれることなく、人類の文化のもっとも古い遺物を含む約1万5000点の「メソポタミア」の宝がブラックマーケットの陰へ消えていった。さらに、大規模で組織だった盗掘が始まり、大量の文化財が掘り出され、闇に消える。その数はおよそ50万点。人類共有の遺産の損失は計り知れない。
本書は、軍人・官僚・戦争立案者・考古学者・収集家といったさまざまな「当事者たち」へのインタビューと、彼らが残した記録によって、掠奪者からイラクの文化遺産を保護することができなかった圧倒的な準備不足――アメリカ合衆国政府の失態――を詳らかにする。悲劇が生まれ、それが長く続いたのは、文化遺産保護を支援する人たちの努力が残念なまでに脆弱であったこと、また、危機に対する軍の組織的な無関心さによって倍加されてしまった事実――ペンタゴンの機能不全と誤った情報伝達にもあったこと――を暴き出す。
著者のロスフィールドは、事実を現在にまで引き寄せながら、国際社会がいまこそイラクから学ばなければならない教訓を論じ、同様の悲劇が繰り返されることに警鐘を鳴らす。軍事進攻と文化遺産の消失という破滅的な組み合わせによって紡がれる「現代のクロニクル」――これは、私たちの過去と未来を読み解くための必読書だ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
くれの
5
原題は陰惨で博物館好きな小生にとって幻滅あるのみです。戦争により失われる人類の宝を理解できない為政者が安易に戦争を決断していることに怒りを覚えます。歴史を軽んずる国家ゆえに歴史がない国と揶揄されるのでしょうか。2016/07/25
さたん・さたーん・さーたん
2
メソポタミア美術を調べた時期があった。神々や王の石像、金やラピスラズリが彩る動植物の装飾品、未だ解明されていない文化の全貌がまた謎めいた魅力をもつ。本書はその文化財を保管するイラクの博物館や遺跡にまつわる、米侵攻前後期の悲喜劇を克明に描写。大勢の関係者、機関が次々に登場し一大ボリュームを形成するが、一人一人の権力者、知識人、兵士たちがそれぞれの思いで戦時に臨む姿は滑稽なほど空転して途切れた線や点はついに一枚絵を描くことなく置き去られる。文化保護の観点だけでなく政治的組織的な問題も絡み合い重厚な読み応え。2023/12/15
ヨシツネ
2
何度見返しても表紙と時のみぞ知るが悲しい2018/06/23
Kaname Funakoshi
0
2003年4月の米軍のイラク侵攻で、国立博物館をはじめとするメソポタミアの人類の宝が市民による掠奪に遭い、散逸した顛末。戦争準備段階で計画すべき戦後処理がまるで計画されていなかったこと、そもそも米国は文化への政府による関与を嫌うため文化政策を持たないこと、戦時の文化遺産に対する配慮は、攻撃対象にしないことと兵士による掠奪を防ぐことが主眼であり、一般市民による犯罪的な掠奪は考慮されなかったことなど。戦闘時の掠奪の様子がリアルで痛々しい。つまり、文化遺産だけでなく、米国の占領政策そのものの話になっている。2017/10/26
takao
0
国家が消滅すると、世界の宝が略奪に2016/09/23
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