内容説明
日本の植民地時代、樺太・真岡町まで流転していった一朝鮮人家族。愚哲は国民学校5年生のときに皇国少年として日本の敗戦を迎えるが、ソ連の侵攻後、一家はユダヤ人の協力を得て辛くもサハリンを脱出する。一族離散のこの体験と歴史の非情は、愚哲少年にはかり知れぬ罪意識を植えつける。在日朝鮮人としての自己形成がうまくいかぬこの未成年者と朝鮮戦争の勃発。戦後日本の、欺瞞と忘却の中で生きる愚哲の希望とは何か。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
木麻黄
1
全6巻中の1巻と知らずに読んでしまいましたが,中々面白い小説でした。旧日本領で暮らしていた朝鮮人(作中呼称)家族が,敗戦後の混乱から日本に密航して,主人公が中学生になる頃までの期間が,小説の時代背景になっています。非常に特殊な家族史が背景にありますが,人が縁故なき地で生きていくには,まさに死闘ともいうべき試練を経なければ,生きられないという不文律を垣間見る思いでした。にしても,青春時代とは厳しい環境への耐性が比較的強いもので,それを過ぎた者が見ると,まさにミラクルエイジと言ってもいい期間だなと思いました。2025/05/10