内容説明
現役の財務省官僚作家が描くメディアの裏側。
地方紙から中央紙「東西新聞」に移った鹿島謙吾には野心があり、いつの日か自分が書いた記事で政治家の「首」を取ることを、新聞記者としての目標としていた。中国の西安で死刑囚の臓器が金銭絡みで日本人患者に移植されているという事実を鹿島は突き止め記事にするが、中国政府は強く反発し、日本国内でも臓器提供の要件緩和を目指す法案が動き出す。臓器移植法案を政争の具として蠢く政治家たち。鹿島はさらに脳死判定におけるデータ改竄と政治家たちの違法献金を追うが、それを公にすることは移植手術を待つ患者たちの希望を打ち砕くことにもなってしまう。正義か、信条か、功名心か、揺れ動く鹿島の決断は……。
著者は「スコールの夜」で第5回日経小説大賞を受賞して話題を集めた現役財務省キャリア官僚・芦崎笙氏。受賞作では大手都市銀行初の女性管理職に抜擢されたヒロインの苦闘を描き金融界の深層に迫ったが、本作で選んだテーマは政治をも動かす巨大メディアでの新聞。政治家の「首」を狙う野心溢れる新聞記者の生き方を通して、公器(マスコミ)とは何かを問いかける。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
evanston
3
著者は現役財務省キャリアーでありながら、この作品を仕上げるのに正確な調査と社会の精緻な観察をしている、これに驚嘆。密度が高くさりとて読みやすい。全国紙の記者になった謙吾が、正義と使命を胸に臓器移植に絡む記事を書く。臓器を待つ家族、ドナーとなる家族、医師の判断、脳死と心臓死の線引き、渡航移植、死刑囚の臓器提供、法案を作る政治家、どの角度からもみても肯ける内容。組織におけるジャーナリストのあり方もよくわかります。記事という公器が幻影におわるところには、人間社会の多様性を痛感。臓器移植より再生医療の進歩に期待。2017/01/31
きよりん
0
「公器の幻影」、このタイトルなるほどね~。色々考えさせられますね~。面白かったです。この作者さんの他の作品も読みたいです。内容とはたいした関係ないけれど、私も彼氏にするには謙吾くん、結婚するなら忠内さんかな~。2017/03/20
chocolate_tokyo
0
難しい内容だった、臓器移植という内容故に。 登場人物の性格が垣間見られるのも面白かった。2016/12/29
よしゆき
0
余韻残る感じ、相変わらずも、内容難しい。登場人物も多い、