出版社内容情報
映画『赤い影』の原作となった表題作をはじめ、日常を歪める不条理あり、意外な結末あり、天性の語り手である著者の才能を遺憾なく発揮した作品五編を収める粒選りの短編集。
内容説明
ヴェネチアで不思議な老姉妹に出会ったことに始まる夫婦の奇妙な体験、映画『赤い影』の原作「いま見てはいけない」、急病に倒れた牧師の代理でエルサレムへのツアーの引率役を務めることになった聖職者に次々と降りかかる出来事「十字架の道」など、日常を歪める不条理あり、意外な結末あり、天性の語り手である著者の才能が遺憾なく発揮された作品五篇を収める粒選りの短編集。
著者等紹介
デュ・モーリア,ダフネ[デュモーリア,ダフネ] [du Maurier,Daphne]
1907年ロンドン生まれ。祖父が高名な作家で画家、父が舞台俳優兼演出家、母が舞台女優という芸術家一家の三人姉妹の次女として生まれる。1931年作家デビュー、1938年の『レベッカ』が世界的なベストセラーとなった。1989年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Kircheis
349
★★★★☆ デュ・モーリア後期の短編集。 流石のクオリティで明らかにハズレといえる物は無かった。 1番気に入ったのは著者が得意なダークロマンス作品『ボーダーライン』。その他、ツアー参加者が各々不幸な真実を知ったり恥ずかしい事件に遭ったりしつつもそれを乗り越えようとする群像劇『十字架の道』、映画にもなったホラーサスペンス『いま見てはいけない』、ダークな雰囲気漂うSF作品『第六の力』の順で楽しめた。 『真夜中になる前に』は恐怖を煽る雰囲気は良かったが、全体的に意味が分からず結末も納得感が薄かった…2023/03/24
紅はこべ
142
解説を読んで映画を観たくなった。ヒッチコックはかなり原作を改変してるが、『赤い影』はそうでもなさそうだから。『ボーダーライン』、この手の出生の秘密系、割と欧米作家好きだよね。「十字架の道」コメディぽかった。キリストの受難の地が舞台なのにね。まさかのSFでの締め。多才な作家だ。2018/04/30
青蓮
130
短編5編収録。表題作「いま見てはいけない」は「赤い影」というタイトルで映画になっているらしく、とても興味を惹かれています。読んでいるとヴェネチアの複雑に入り組んだ街並みが見えるよう。同じく旅情を感じる、エルサレムツアーで来た英国人達を描く「十字架の道」も聖地巡礼する人々の雑踏や喧騒が聞こえるようで、そこで繰り広げられる人間模様が面白い。SFチックな「第六の力」は死にゆく者の生命エネルギーをコンピューターに取り込もうとする話で何だか空恐ろしい。どの物語も短編とは思えない程濃密な世界を構築しており大満足の1冊2018/01/28
とん大西
122
表題作『いま見てはいけない』がなんとも不条理で理不尽。思いもよらなかった結末があとを引きます。我が子を失ったジョンとローラのイタリアへの傷心旅行。その時出会った風変わりな老姉妹。盲目の老婆が見えたものとジョンが見えてしまったもの。邂逅がなければ避けられたか。目にしなければ避けられたか。重なり、交錯した不条理のその先…なんとも絶妙ですゎ。2022/05/03
KAZOO
98
デュ・モーリアの作品は昔映画を観たときに読んだ「レベッカ」しか知りませんでしたが、この作品を読んでかなり私の好みに合う作家であると感じました。五つの作品が収められているのですが表題にもなっている作品が一番印象に残りました。映画化もされていて、ドナルド・サザーランド(今は悪役が多いですが)が出ているようで観たいと思いました。また最後の作品も変わっていてSF的な感じがします。2015/06/16