内容説明
ひとり都会に暮らす女たちの様々な心の風景。埋められない孤独と断絶感を抱きながら、都会の片隅にひとり暮らす女たち。結婚、仕事――揺れ動く心のかたちと生きかたを細緻な筆で描く秀作集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のれん
13
この作者は無機質な官能描写が多い初期に近い作品が好き。 表題作の突き放しながら待ち望んでいるスリルに近い恋も良いが、特に『私の知っている彼について』で描かれる無機物の抱かれることのない男の視姦がゾクゾクする。 犯罪を含めた背徳の快感を活かした題材で、気色悪くとも抑圧された人間が持つ開放の瞬間に、接点がなくとも感情移入してしまう。 それはきっと語りの持つ魔力だ。好みから始まる退屈を紛らわす背徳は、きっと己を焦がす魅力になる。淫らな物語。2020/08/29
Apollo
5
自分が透明な目になって語り手の世界を静かに見守っているような気分になる。表題作の「声の娼婦」、言葉を交わす友人は少ないが自分自身と深く心を通い合わせている、孤独に対する絶対的な安心感がいい。一番気に入ったのは最後の「魔草」。「私はたぶん、ありふれた一人暮らしの、どこがどういうこともない時間の中で、とくにあがきもせず、自分をみじめだとも思わず、這い上がろうとも落ちようとも思わず生きていられるたちの人間なのだ」「そう思いつつ、自分では想像もしなかった人生に足を踏み入れる瞬間もあるのだ」(P.194)が好き。2015/08/03
nana
4
この本を読んで著者のファンになりました。大好きな作品です。こんな小説を書きたい。2016/11/07
三井陽子
0
相反するかもだけど、無機質な色気という感じ。『半島へ』の枯れてる美しさとは、また全然違う感じ。2015/09/14