内容説明
類い稀なる才能を持ちながら、勝ち切れなかった人がいる。勝利の女神に翻弄され、己を見失った人がいる。栄光を手にする選手の陰で、最後のピースを探し、暗闇の中で彷徨う彼ら。勝敗が全ての世界で、彼らは何を考え、その果てに何を見つけたのだろうか。人生のままならなさに、懸命に、ときにしなやかに立ち向かう5人の軌跡。文庫オリジナルで贈る、傑作スポーツノンフィクション。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ばりぼー
47
俎上に乗るのは、小鴨由水(マラソン・バルセロナ五輪日本代表)佐藤信人(ゴルフ・ツアー9勝)杉林孝法(三段跳び・シドニー、アテネ五輪日本代表)高橋繁浩(平泳ぎ・ロサンゼルス、ソウル五輪日本代表)栗秋正寿(登山・最年少でマッキンリー冬季単独登頂)という紛れもない「一流」のアスリートばかり。いずれも「そんなに努力してないのに間違って勝ってしまった」ために、その後泥沼にはまって「超一流」になり損ねたという扱いが、そもそも失礼極まりないと思うのですが、傷口に塩を塗る容赦のない取材に、誠実に応える人柄に敬服します。2014/09/02
したっぱ店員
43
一度まぶしいフラッシュの中にいた5人のスポーツ選手のその後を描いたノンフィクション。ぽーんといい結果が出てしまったゆえの戸惑い、もうその後は無心ではいられない難しさ。ままならないなあ。選手個人個人はなかなか曲者で、「悲運」というタイトルで恐れていたようなお涙ちょうだいなルポでなくて面白かった。ゴルフのイップスの話は特に興味深い。2017/10/11
金吾
31
脚光は浴びながらも超一流の評価は受けなかったアスリートたちですが、なかなかわからない話でしたので興味深く読みました。小鴨選手、高橋選手は記憶にありますが、一番面白く感じたのは栗秋さんの話でした。2023/04/29
Willie the Wildcat
30
才能と運を兼ね備えたプロ。キャリア初期における栄華を如何にその後に繋げ、振り返るか。精神面の揺れ動きは、プロ故の技術と結果への探究心。競技者からの引退にも個性。印象的なのが、コーチの存在と相性。結果への相関関係は主観的だが、精神面での支援の必要性を再認識。一方、競技者の評価?第3者が語るのは論外であり酷。当たり前の話だが、本人のみが知る心の在り方が、評価ではなく過程への”振り返り”ではなかろうか。2015/06/03
ちいらば
28
悲運とは勝手に周りが決めていること。派手な勝ち方の後の紆余曲折がどちらかといえばこの本のメイン。おそらく「勝ち続けている」一流のプロに隠れた大多数の人を描いているという点で主役の立ち居振る舞いに共感しやすく、また苛立ちさえ覚えてしまうところもあったり。2016/07/30