流砂

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流砂

  • ISBN:9784488010652

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内容説明

これが私の生きる条件を変えた十日間の真実である。流砂は地獄への穴だが、私はなんとかそれに嵌らなくて済んだ。――がんの告知を受けた北欧ミステリの帝王マンケルは何を思い、押し寄せる絶望といかに闘ったのか。遙かな昔に人類が生まれてから今日まで、我々は何を受け継ぎ、そして遠い未来の人々に何を残すのか。〈刑事ヴァランダー・シリーズ〉の著者の最後の作品。闘病記であり、遺言でもある、魂の一冊。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ふう

79
図書館で借りてはみたものの、タイトルと表紙の絵の重さにたじろいでなかなか読み始められずにいました。ガンで余命が長くないことを告知された作者が綴った、67編のエッセイ。過去へ未来へと行き来し、放射能の処分について、欧州に支配されたアフリカの人々について、女性の苦しみと解放についてなど、その内容は多岐にわたり、マンケルがどれだけ人々の幸せを願っていたかが伝わってきます。最後のタイトルは「決して希望を奪われるな!」。彼の作品が大好きですが、作品に込められた彼の思いが好きなのだと改めて思い知らされました。2023/05/29

キムチ27

53
素晴らしい1冊。これも今年のヒットに入る。小説と思って読んだがある意味、箴言集。北欧の巨人、マンケルが2年前に癌で夭逝した時、彼の年齢数だけ想いを章ごとに語る。彼を知っていなくても泪するであろう珠玉の文ばかり。「死」という言葉が溢れている。北欧のみならず、日本でもその言葉は忌まれている。だがどうだろう・・死は必ず訪れるもの。QOLを超え、現在、QOD・・どう死に面するかの哲学が必要だと思うから尚の事。氷河から発掘された操り人形、それは素晴らしい贈り物。が、現代の我々は核のゴミを未来へ贈るだけ。余りに無責任2017/12/12

ばんだねいっぺい

29
 年齢の数で編まれた珠玉のエッセイ集。絵をひもとく鑑識の目の高さ、劇場支配人としての顔、歴史好きとして文明の行く末を見つめる姿。ヴァランダーは、作者の分身で間違いないようだ。それを確かめることになった。2016/11/06

ほちょこ

27
ヘニング・マンケル氏が自らのガンを知ってから書き綴ったエッセイ。化学療法をおこなう間に、彼の60年間の「考えた瞬間」をフラッシュバックのように見せてくれた。まるで作品を書くための秘密のノートのように。一つ一つの出来事が、マンケル氏の身体を作り上げてるかのよう。そして気がつけば、次の作品を心待ちにしている自分に気づく。年明け一番、大事な一冊に出会えた。2017/01/21

kri

8
北欧ミステリーの大御所が末期癌宣告を受けての半年間に書いた67の文章集。青天の霹靂であった不治の病という事実。どんなにもがいても人を引き摺り込み呼吸を奪い死に至らしめる砂の層。流砂。自分はその淵にあり恐怖に負け全て諦めてしまいそうになる。だが彼は自分の存在は大きな宇宙の中で、長い地球の歴史の中で小さな点に過ぎず人生は完結などせずに突然終わる束の間のものだという考えに立ち返り、文章を書き続けた。太古の壁画を残した人類のこと、現代文明が10万年後に残そうとしている核廃棄物のこと、忘れ難い人生の出来事のこと。2021/03/12

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