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内容説明
英文学者・夏目漱石の仕事がもっと読まれてよいのではないか.本書はもと「十八世紀英文学」のテーマで行われた講義であって,漱石は日本人としての主体を鋭く自覚し,また堂々と貫きながら十八世紀イギリスの作家と作品に,その社会に切りこんでいった.外国文学に関心をもつあらゆる人の必読書. (解説 平井正穂)
目次
目 次
第四編 スウィフトと厭世文学
第五編 ポープといわゆる人工派の詩
第六編 ダニエル・デフォーと小説の組立
解 説……(平井正穂)
注 解……古 川 久(編)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Gotoran
43
『文学評論』とは、”十八世紀英文学”というテーマで行われた英文学者・夏目漱石の講演録で、本書、下巻は、「スウィストと厭世文学」「ポープといわれる人工派の詩」「ダニエル・デフォーと小説の組立」の三編から成る。スウィフト、ポープ、デフォーが取り上げられ、詳細な評論が行われている。特に、スィフト文学の諷刺の特質が『ガリバー旅行記』の詳細な分析を介して論評されているところは、非常に興味深かった。2022/10/03
ころこ
32
漱石だから残っているだけで、時間を掛けて読むには実益に乏しい本です。スウィフト『ガリバー旅行記』とポープという詩人、デフォー『ロビンソン・クルーソー』が取り上げられています。偏っていたであろう漱石の英文学の知識からのピックアップですが、3人とも共通点があります。社会から疎外されており、疎外感が想像力に反映されたことが顕著に分かる作品を書いていることです。そして、漱石も幼少期の問題を作品にしています。2020/01/25
しんすけ
5
漱石の基調は諧謔であった。スイフトを評価しデフォーを侮蔑せしめる本下巻の文体はまさしくそれを示す。事実を羅列した文書は法廷の陳述記録や実験レポートとして意味あるかもしれないが、文学見地からは敬遠すべきものである。叙述に諧謔がないからである。その意味では、スイフトは面白くデフォーは面白くない。ところが、『ロビンソン・クルーソー』は18世紀のイギリスではベストセラーになった。なぜだろうか。2017/11/02
ウイロウ
4
(承前)対するスウィフトの方はほぼ絶賛。単に褒めているばかりではない。『ガリヴァー旅行記』の分析も非常に鋭く、この第四編が確かに集中の白眉であると思う。今年に入って、風刺という表現方法が図らずも議論の対象となった。しかし「人間は一人残らず根本的に下劣醜陋な動物なりとの観念を諷喩的に述べ尽くし証し尽した」スウィフトの場合、そんな議論を超越してしまっている感じがする。漱石がこの「最(もっとも)強大なる諷刺家」に熱い共感を寄せたのもむべなるかな。ともあれ、ある意味では著者の創作以上に刺激的な『文学評論』だった。2015/01/30
shinano
4
上巻もそうであったが18世紀英文学作品からの引用原文に漱石の翻訳が付してあるのだが、この読み方が漱石の批評内容を成立させる上で重要なのだろうと察する。(わたしに英文原文を理解する力がないものだから仕方ない) 英詩人作家評家を取り上げて漱石流な切り口だと思えるところは随所に見られます。本書上下巻の通読を意味あるものにするためにも、スウィフト、デフォー、テニスン、沙翁の作品の一読は避けられないと感じました。東大文科大生への講義からの本書の成立なので当時の学生専門知識と相変らずの漢語表現の難しさがある。2010/07/26