内容説明
人間という生きものの不思議さ、運命のおそろしさ……“ポン引き”の生き方を活写した軽妙洒脱でユーモラスな表題作、忠臣蔵の悲劇の主人公浅野内匠頭の、説明のつけようもない二面性を照射した「火消しの殿」、芝居や映画のヒーローとしてではなく、一人の武士として己れの立場を貫いた男を描く「荒木又右衛門」など、著者の多岐多彩な小説世界の粋を精選した11編を収める。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
saga
61
岡本綺堂『半七捕物帳』を読み終えるのが惜しくて、巨匠・池波正太郎の作品を間に挟もうと思った。岡本作品が江戸弁、江戸の街並を彷彿させる筆致だとすれば、池波作品は人情を描く。浅野内匠頭、鳥居強右衛門、荒木又右衛門といった有名どころを配するかと思えば、「あほうがらす」のように市井の……それも裏社会の商いをも描く。そして男色、今で言うBLも、江戸時代の武士の常識として書いているのが著者の作品としては珍しかった。2022/12/03
優希
46
面白かったです。池波氏の多彩な小説世界を味わえる短編集でした。2023/03/10
nemuro
18
なんとなく、お馴染みの作家のような気がする池波正太郎だが、よく考えてみれば、それは『剣客商売』や『鬼平犯科帳』などテレビで観る時代劇の原作者としてのこと。実のところ、本の方は、あまり(というか、ほとんど)読んだことがなかった。そんな中、先日訪れた、旭川のジュンク堂書店の「選定本コーナー」のような机上に置かれていたのが本書。ユニークな表紙装画(あとで、著者による作品であることを知ったが)に惹かれての購入だった。表題作を含めて11編を収録。どれも読みごたえのある秀作だが「鳥居強右衛門」が特に面白かった。2018/12/13
けやき
18
短編集。11編収録。「つるつる」が読後感がよい。身体的コンプレックスを持つようになった市之助が自分の生きる道を見つけていけたのがよかった。また「狐と馬」は不思議なお話でした。2015/11/28
Kira
15
読むのは三回目。何度読んでも飽きない。この魅力は何なのだろう。巧みなストーリーテリングでもあり、人生の真実が語られているからでもあると思う。来年もきっとまた読むだろう。2022/08/21