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内容説明
アメリカとは単なる地名でもなければ国名でもない。キリスト教旧世界が新たな大地に作り出した制度空間の名である。1492年、コロンブスにその一端が「発見」された新天地。西洋から見て「無主の地」は「法的所有」の対象となった。征服と植民により獲得され拡大する新世界。そこに教会・旧制度から逃れるように<自由>と<個人の自立>の観念が生い茂る。今や世界の隅々に浸透しているその根強い規範性の由来を探る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
樋口佳之
29
院で輪読もわかる太い論考だと感じました。/たとえアメリカという国家の地位がこれからの国際関係のなかで衰退するにしても、自己拡張するシステムとして作動しているこの〈制度空間〉はあいかわらず浸透し続けてゆく/誇大な夢はいつか破綻する。その災厄は小さくないだろうが、そのときはこの制度空間の破綻の後、再び人間の生存の身丈に合った規範空間が再生されざるをえないだろう。少なくとも再生の可能性に結びついた世界が残されていなければならない。2018/06/09
武井 康則
10
この場合の制度とは、思想と読み替えられる。空間的に、中世のヨーロッパ人に取っては突然現れた、アメリカ大陸は歴史の外側から現れたともいえる。あらゆる習慣や伝統から自由で、個人が領有を宣言しただけで所有できる土地は、その地の権利を生み、自由に使用、処分できた。こうして所有と自由の思想を身に着けたアメリカはすべてに敷衍し、持つものにその処分の自由を約束する制度を作り上げ、世界中に拡張していく。もちろん持たざる者に自由はない。2019/07/01
mittsko
8
院の授業、皆で音読の輪読の通読した(。・ω・。) 読んで大いによかった! 暗い影響力をいや増す「アメリカ」を理解する、重要な道筋を示していただけた。それは非常に絶望的なヴィジョンである。本書はそこからの抜け道を一切示唆しない。それは読者にあたえられた重大なる課題、ということだろう ⇒ アメリカという「制度空間」の「成り立ちと特質、社会のあり方とその史的構造的展開」を、そこに特徴的な〈自由〉に注目することで、徹底的に読み解く一書。通常のアメリカ史ではなく、あの場所がかかえる業を歴史的にひもとこうとする2017/12/08
しゅん
8
戦争や経済、というか「世界」を今考えるならアメリカに向かわざるを得ない。日本人のフランス思想研究家がアメリカについて書物を発行する理由はそこにしかないだろう。本書は歴史推移を追いながら「アメリカ」という名前が孕む本質を抉り出し、かの帝国が掲げる「自由」がどのような異形さを有しているかを紙に刻み付ける。ブレイディみかこが地べたから見た貧困と差別の風景に、著者はグローバルな視座を加える。二重露光された写真には、自由の名の下に生存と尊厳が奪われゆく世界中の人々の姿が幽霊のように映し出されているだろう。2016/11/03
しゅん
5
アメリカは国名ではなく、所有に基づいた「経済」の自由を絶対価値とする制度空間であり、ゆえにアメリカは世界に広がっていく。2020/06/04
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