内容説明
吉行文学の真骨頂、繊細な男の心模様を描く。
戦後の混沌とした時代、男は安定を求めて大会社のサラリーマンとなった。
だが、人員整理でクビとなり退職金を受け取った日、ヌードモデル志望の少女と出会う。丸顔に濃い化粧、大きな頭でアンバランスな躰の彼女にやがて愛憐の情が湧きはじめる――。
空虚感を纏いながらこの時代を生きていく男と雑誌編集者の友人との交流、戦禍に散った友人への回顧など、卓越した心理描写で綴られた珠玉の作。
他に「水族館にて」「白い神経毬」「人形を焼く」の短編3作品を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケニオミ
9
吉行淳之介はこれまで読む機会がありませんでした。そのせいか、図書館で見つけた本書を思わず手にしていました。結論から言うと、あまり感心しませんでした。いろいろと心理分析しており、その分析も外れてはいないと思うのですが、ほとんどが人間の性的な行動に向けられていおり、敢えて分析する必要があるのかしら、と印象を受けました。吉行淳之介講座100でドロップアウトしてしまった気分ですが、この作品が代表作の一つであるのならば、ドロップアウトもまたよしですかね。2016/12/04
aki
7
なんか難しかった。ある男が出会った女の子が、飯屋の住み込みからアイドル(?)になっていき、なんだか不自然に変化していく様子を観察してる、みたいな。女の子から女性になっていくっていうのと、身近だったのがどんどんテレビに寄せたファッション、考え方を持つようになって自分の知ってた女の子から離れていくっていう感じ?なんか、読みにくくはないけどよくわかんなかった2017/07/22
ムツモ
2
芸能界に入りたい女の子と、その子に惹かれる男の話。主人公に限らず、また併録の短編でも、どの男も女性を欲情の対象としか見ておらず、男尊女卑の感がずっと漂っていた。時代が違うと言えばそうだが、やや不快かな。「水族館にて」はそれでも面白かった。2019/06/13
湯豆腐
0
印象的な描写は多々あるものの「水族館にて」がよくまとまっているので、あえて長編にした意味があるのかなという疑問はある。2017/03/13
Y.T
0
将来に向かって具体的な希望を持ちえない主人公の荒れた心がよく描かれていてよかった。主人公だけでなく、他の登場人物もそれぞれに荒れた面を抱えていて、それを何とかぼやかしながら生きている。描写が即物的なのに、超自然的な雰囲気も感じられてよかった。2020/08/27