角川文庫 ねらわれた女学校 セーラー服と黙示録

著者名：古野まほろ【著者】/九条キヨ【イラスト】

KADOKAWA（2016/09発売）

• ISBN：9784041044520

内容説明

十字架、悪魔、吸血鬼……探偵養成学校聖アリスガワ女学校で発生する４つの怪事件。犯人を推理する今日子、手口を推理するみづき、動機を推理する茉莉衣。うら若き探偵たちが真相に挑む、華麗なゴシック・ミステリ！
閉じ込められた……今日子が目覚めると、そこは永遠にループする「無限階段」の世界だった！　同じく閉じ込められたみづきと茉莉衣とともに、それぞれの探偵術で脱出のための解に挑む！　シリーズ珠玉の短編集。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

[W-G]

名刺代わりの短編集という印象。天帝シリーズを読了したばかりだったので、茉莉衣が『華館』の葉月女史の娘だとようやく気付けた。内容に関しては、表題作は全然理解出来なかった(^_^;)あの計算式の果てに結局どういう脱出方法だったのか。ただ、三人の個性の違いがそれぞれの目線で語られるのは読んでいてじゅうぶん楽しい。設定上、学園内の事件の比重が高くなる=バンバン人が死ぬのも世界観壊れるので日常の謎主体の短編集になる。というのも予想出来た事だが、吸血鬼や魔女狩りなど、独自のプラスアルファを持ってきて個性的な仕上がり。

2017/06/25

[ひめありす＠灯れ松明の火]

先輩は噓をつくものよ、気をつけなさい。寮室で信仰の要たるロザリオが盗まれた少女がいて。年頃になったなら友を信じなさい。キリスト様の加護に守られた学園で吸血鬼が脱出の術を探して惑う。羊の顔をしていても運命は牙を剝く、そういうものよ。ある時は異端審問の魔女裁判に無辜の乙女達が陥れられ、またある時は女学校自体が狙われた空間と化すから。この人だけは大丈夫だなんてうっかり信じたら駄目、駄目、駄目駄目よ。自分を甘やかさないで。薩摩おごじょの血が泣くわ。SOS、SOS、ほらほら呼んでいるわ。今日もまた誰か、乙女のピンチ

2017/04/23

[雪紫]

再読。「セーラー服と黙示録」短編集。短編集でもあらゆるものがねちっこく執拗・・・なのはまほろ全般共通として、盗難だったり「金尅木」の設定を継ぐ吸血鬼が出たりジャンルが豊か。初読時は凝り過ぎに頭整理出来ずにいたけど（カトリックの同性愛認識、思ったより厳しくない）、ホント凝りまくったパズル小説にして陰謀小説だよ本当に・・・校長さまとシスター・ルチアやっぱり濃過ぎ（再読前は謎解き部分は「吸血鬼」だけ覚えてたのに読んだら記憶かなり思い出して来たし）。

2025/09/07

[ゆんこ姐さん@文豪かぶれなう]

フーダニットの島津今日子、ホワイダニットの葉月茉莉衣、ハウダニットの古野みづき。三人が様々な謎に立ち向かう。表向きは探偵養成高校アリスガワ女学校。カトリックを基本の教えとするその学校では、しかし宗教の自由が赦されている。さて彼女たちが挑むのは①消えたロザリオ②美少年吸血鬼を如何に逃すか③悪魔のサバトに加わったとされん、魔女ーー生徒ーーたちを救えるか④マグダラ計画に関する脳内への口撃(謎？)を如何に解くか。まさに孤島として、閉ざされた学校ーークローズドサークルーーの中で、三人がそれぞれの個性を持って挑む。

2016/09/30

[geshi]

『消えたロザリオ』一般的な錯誤をうまく活用している。ババ抜き的論理展開に言い抜けの潰しの重ねが周到。『とらわれた吸血鬼』吸血鬼をいかに孤島から脱出されるかのハウダニット。吸血鬼より使うモノの方が荒唐無稽に感じて面白い。『あらわれた悪魔』逆転魔女裁判。倒すべき相手がハッキリしているから言葉の罠や知識勝負込みの崩しについても爽快感が生まれる。『ねらわれた女学校』純粋なパズルの問題。答えそのものは早めに気付くが、現実的に導きだす手法論の違いがそれぞれの探偵術と合致するキャラクター分けがうまい。

2017/01/30