内容説明
生野にも押し寄せる、近代化の荒波。落盤事故やストライキを乗り越えて新しい鉱山が動き出す。女たちの運命もまた然り。エリート技師の夫とすれ違う咲耶子、家族を養うため町の有力者に身請けされた芳野、父の遺言で嫁入りが決まった志真。恋に泣き、夢破れてもなお続きゆく人生。苦しい過去を背負いながら、やがて再生の未来へとつながるそれぞれの銀の道とは──感涙必至の大長編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
baba
34
芸者芳野のあでやかさ、たおやかな強さ。下女志真の健気さ。それなのに上流階級で知識も豊富なはずの咲耶子がはっきりしない事がこの物語を動かしているのかと思わせるほど問題山積。しかし生きているだけで良いと告げる雷太。長い苦難を思えば終わりは簡単であったがそれも作者が「おわりに」で言っている様に新しい始まり、出発点であるからなのであろう。2016/06/05
佐々陽太朗(K.Tsubota)
29
貧しさ故に、発展途上にあるが故に理想の世界は遠い。物事は人々がそうあって欲しいと思うとおりにならない。全員が救われ満たされるなどということは夢物語に過ぎず、現実には誰かが泣く。人々は泣いた者の犠牲の上にかろうじて生きてゆけるのだ。「どうすれば最大多数が泣かずにすむか」それが、この物語に登場する人物、雷太、芳野、志真の規範だ。「最大多数の幸福」ではなく「最大多数が泣かずにすむか」という表現が哀しくも厳しい。人のために懸命に生き、あるいは己を捨てて他を生かそうとした高潔な心に胸を熱くした。2011/09/15
のびすけ
23
近代化の波に揺れる生野銀山。一番坑夫の雷太と三人の女性、咲耶子、芳野、志真の激動の運命。それぞれの壮絶な生き様に心を揺さぶられた。深く感動。2024/11/28
との@恥をかいて気分すっきり。
21
とても読み応えある小説でした。生野銀山は昨年行ったところで、富国強兵のもと多くの韓国人も奴隷のように働かされた歴史ももつ、日本近代の明と暗を併せ持つ山でした。数奇な運命を背負って生きる男と、3人の女性を描いた本作は、その激しい生き様と動乱の世の中が絡み合うように進む物語に目が離せなくなります。2015/03/06
あすか
17
下巻はたくさんの不幸から始まる。幸せを掴んだかに思える者も、次の瞬間には不幸が襲いかかる・・・。「直利」ができるかどうか、それが人生の決め手になるんだろう。2020/08/24
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