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内容説明
深刻な民族問題やシベリアの資源開発など、現在のロシアが抱える問題の多くは、帝政ロシア時代にすでに始まっていた。ロマノフ王朝の300年を中心に、ソ連邦の74年間をも加えた、広大無辺を誇る多民族帝国の通史。大改革を強行したピョートル大帝、女帝エカテリーナ2世と寵臣ポチョムキン、革命の中で銃殺されたニコライ2世一家。「よきツァーリ」たらんと奮闘を続けたロマノフ家の群像と、暗殺・謀略に満ちた権力のドラマ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
buchipanda3
99
ロマノフ王朝の帝政を軸に中世・近代ロシアの歴史を語った本。題名に大地とあるように、やはりロシアは広大な領地のことが思い描かれる。キエフやモスクワを起点に南方、東方へ拡大していく歴史のながれ。ピョートル1世による西欧主義化、エカテリーナ2世による啓蒙主義を経て近代的な大国化するも、社会基盤の安定よりも主義先行の専制維持が優先され、常に社会的に不安定な要素をはらんでいたように感じられた。タタールのくびきによる長年の防衛意識の影響も無視できない。地政学が国の歴史に与える影響は大きいのだと改めて感じた。2020/06/20
優希
88
ロシア・ロマノフ王朝と銘打っていますが、ざっくり言えば帝政ロシアの歴史といった感じでした。ロマノフ家によるロマノフ王朝の建立からソビエト連邦への継承とその崩壊までが述べられています。ロシア史に焦点を絞っているので、非常にわかりやすく且つ専門的にロシア帝国の歴史を押さえられると思いました。ロマノフ家の群像、ソビエト連邦の通史、暗殺と謀略に革命に彩られたロシア帝国の流れを見ていくと、複雑な歴史を背景に抱えた国なのだなと実感させられます。権力が渦巻いたが故に崩壊していった国なのですね。2016/10/03
ころこ
39
キリスト教の受容が政治的な問題となっている一方で、その後にフランス革命の影響を受けたデカブリストの蜂起、そして共産主義に振れる極端で不器用な感じは、広大な国土の農民を管理するためには確かに必要だったのかと思わせます。中国と共通しているのは国土の広さで、上手くいったのはキューバのような小国です。なぜモノを考える人は共産主義に共感し、それを実現しようとしてしまうのか。現在、我々がただ傍観者としているしかないブレグジットが必然的にみえないように、ロシア革命も必然的にはみえないのですが。2019/08/07
加納恭史
26
スヴェトラーナ・アレクシェーヴィチ著「戦争は女の顔をしていない」は読んだが、独ソ戦で活躍した少女の狙撃兵はその後幸福になったのだろうか?疑問が残った。次に詩人プーシキンの「大尉の娘」や伝記も読む。次に「ソ連史」なども読むが、ロシア全体の歴史はどうなんだろうと思う。そこでこの本を読んでいるのだが、やっとダイナミックな物語がある。その第一はピョートル大帝の「革命」なのだろう。良し悪し抜きに面白い。次は啓蒙君主エカテリーナ二世。女帝君主と寵臣ポチョムキンとの愛欲もある。更に最近のゴルバチョフまでの混乱まである。2022/05/26
em
22
ロマノフ朝を中心に、ざっくりと中世~現代まで。むかしアンリ・トロワイヤの伝記ものにはまっていたことがあり、その時は他国はこの頃…という視点がなかったのですが、今回は特にオスマン帝国(の、西欧に対する意識や態度)に思いを馳せつつ読んでいました。〈貴族も民衆も「強いツァーリ」に期待するところがあった〉という一文は印象的。強すぎる指導者を嫌う国もあったり、こうした傾向にはたいてい揺り戻しがあるところ、ロシアでは今も…というのは、一筋縄ではいかない要素が絡み合っているのだなと。2018/04/23