内容説明
星好きは大変である。観測は気象条件に大きく左右される。春先はまだ朝晩は寒いし、曇りや雨なら天体は厚い雲の彼方で何も見えない……。でも、天空の味わい方はそれだけではない。天文学がある。ここでは「てんぶんがく」と読んでみよう。世界各地の星に関わる伝承や物語のこと。たとえば、春の夜空に輝く「春の大三角」のひとつ、うしかい座にはどのような話が伝わっているのか。ギリシアで誕生した最も古い星座のひとつで、「鋤や牛を使って畑を耕す人」の意味をもつという。また、葡萄の収穫時期を知るのに用いられたという言い伝えも残されている。日本では、うしかい座の主星アルクトゥールスを、麦が実る頃に見えるので麦星、鯛がよくとれる時期に見えるので魚島星などとも呼ぶ。ひとつの星や星座にもさまざまな云われがあり、地域によって何が大切にされているかがわかる。いわゆる八十八星座はあくまでも西洋の想像力の産物。日本だけでなく、インドや中国、南北アメリカなど、天空への見方は一様ではない。星や星座のほか、月や太陽、流れ星や天の川に対して、私たち人類はどんな物語を紡いできたのか。ジャンルの垣根を越えた約1700項目収録。図版多数掲載。索引も充実。雨の日も心おきなく星の世界を満喫できる一冊。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
陽@宇宙望遠鏡⭐︎星と宇宙とロケットが好き
13
初読は2013年頃、図書館で読んでとても気に入って2019年に購入。辞典なので、パラパラ読んでいるけれど世界各国の星に纏わるお話の用語が載っていて読むのが楽しいです。同じ星座を見て紡ぐ物語が多種多様にあって、そして共通する部分もあって、人は自然の中に投影したりイメージしたり、物語があって生きていくのだなと思います。科学的な知識と文化的な伝承などの資料と両方の視点から読むのは楽しい。2021/08/02
陽@宇宙望遠鏡⭐︎星と宇宙とロケットが好き
10
月や太陽、金星や木星火星に土星、天に輝く惑星たち。そして煌めく星座や流れ星、天体現象に至るまで世界各国、時代を超えて神話や民話伝承として、人は空を見上げて思いを生活を願いを物語を紡ぐ。どんな言語、人種、場所にいても見上げる空、天体に想いを馳せて人の心の多様性や共通点を知ることができる素敵な一冊。地球外知的生命体に出会えたら、この本にアクセスしたら嬉しいな。たったひとつの星に幾つも物語を紡ぐ地球人のことをどう思うのだろう。いつか出会えてそんな話をしてみたい。2021/08/23
メルセ・ひすい
4
天文学への招待。信仰、民俗、伝承、神話、芸術など、世界の様々な地域や時代における星と人間との関わりをまとめた、はじめての事典。約1700項目を収録。図版多数掲載。★星宮神社…岐阜県郡上市美並にある。平安時代に都から瓠ケ岳に鬼退治にきた藤原高光が創建した高賀六社のひとつ。高光がこの神社の辺りで迷ったとき、粥川のウナギが正しい道を教えて無事に鬼退治が成功した。ウナギは虚空蔵菩薩の使いとされ、以来、粥川の人々はウナギを食べない。奥の院が虚空蔵堂である。祭神として明星天子を祭る。が、ご神体は虚空蔵菩薩さま。2012/05/02
夢追人ヨーク
1
星についての民俗学的資料を、地理的にも歴史的にも壁をぶち抜いて集めたような事典。有名どころは控えめ、人物史、天文学史は範囲外。 全項目に参考文献が付いているので戻って引きやすい(多分この制限のせいで載せられないモノが沢山ある)。本棚の主になってもらいましょう。2018/05/02