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内容説明
信用できない情報の代名詞とされる「大本営発表」。その由来は、日本軍の最高司令部「大本営」にある。その公式発表によれば、日本軍は、太平洋戦争で連合軍の戦艦を四十三隻、空母を八十四隻沈めた。だが実際は、戦艦四隻、空母十一隻にすぎなかった。誤魔化しは、数字だけに留まらない。守備隊の撤退は、「転進」と言い換えられ、全滅は、「玉砕」と美化された。戦局の悪化とともに軍官僚の作文と化した大本営発表は、組織間の不和と政治と報道の一体化にその破綻の原因があった。今なお続く日本の病理。悲劇の歴史を繙く。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kinkin
118
コロナ禍とオリンピック開催で大騒ぎになっている今から遡ること10年前、復興だの絆だと言葉だけが独り歩きし昨今は安心・安全の連呼。この本に出てくる戦争当時のスローガンと今共通点が多いことに気づく。曰く「必勝の信念」「1億一心」「勝利はあと一歩」他にも。今も大本営発表が日々行われていることは隠しようのないこと。オリンピックを開催して国民皆でコロナに打ち勝つみたいなことを言うのは止めよう。もう負けていることは事実。コロナで命を落とし生活に困窮する者が増えることは明らかだ。図書館本2021/07/04
サンダーバード@読メ野鳥の会・怪鳥
77
大本営発表は報道にとって暗部であり、今でも「権力者が発表する都合の良い情報」という意で残っている。政治と報道が癒着すると碌な事にならないのは過去の結果が証明している。大本営発表が真珠湾攻撃以前からあった事、そして初期の頃は軍部よりもむしろ新聞社の方が、過激な報道により読者を得ようとしていたことを初めて知った。開戦当時は正確であった大本営発表も次第に過剰な修飾語が目立ち、戦局の悪化と共に嘘で飾られたものとなっていく。批判・検証という使命を置き去りにした時点で、報道機関は本来の存在価値を失ったのだ。★★★★2016/12/02
つきかげ🌙
55
#れいわ革命 第2次大戦中に繰り返し行われた大本営発表を紹介しつつ、現在の政治とメディアの関係についても言及。大本営発表も最初のうちは正確で、戦果の下方修正なども行われた。ミッドウェーの敗北を機に、戦果のごまかしがはじまっていく。意図的なごまかしもあるが、ベテランの飛行士がいなくなるなか、未熟な飛行士の目視によるあやふやな戦果もそのままのせる。大本営発表をめぐって陸軍と海軍の対立も激しく、海軍が正しい情報を流さず、陸軍が海軍の発表した内容を信じて作戦を立案し、大敗北をしたという話もあった。2019/03/18
更紗蝦
54
太平洋戦争時に大本営発表がデタラメになっていった経緯が丁寧に分析されています。最初から嘘まみれというわけではなかった大本営発表が破綻していった原因について、著者は「日本軍の組織間の不和対立」「日本軍における情報の軽視」「戦局の悪化」「軍部と報道機関の一体化」を挙げています。終盤で述べられている近年の問題として、「ネット上に見られるメディア批判が“取材態度が気にくわない”とか“政府批判を偏向報道呼ばわりする”等に終始しており、“報道の独立性”を蔑ろにしている」という指摘は重要です。2017/02/18
おかむら
41
陸軍と海軍ってこんなに仲悪いのかよ! 双方のメンツや対立やなんやかんやでアホみたいに嘘の上塗りがエスカレートしてく様は面白がっちゃいけないけども面白すぎる。なんて愚かなの「大本営発表」。分量も新書サイズで読みやすいし、発表を時系列で見ていくので太平洋戦争の大まかな流れがつかめて役だったわ。この著者「ふしぎな君が代」も面白いしアタリの人だ。次また本でたら読もう!2016/10/21