内容説明
昭和18年4月、特設巡洋艦愛国丸は、台湾での基礎教育を終えた海軍第二期予備学生550余名を乗せて帰国の途につき、呉に入港した。ここで予備学生たちはそれぞれの配属先に別れるのだった。霞ヶ浦航空隊の栗原、海軍兵学校の田崎、館山砲術学校の三宅――彼らは厳しい専門訓練を経て任官し、前線に出てゆく……。自ら青春を日本海軍とともにした著者が情熱を傾けた渾身の二千枚。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
金吾
29
◎阿川さんの著書で一番好きな話です。著者自身が経験している海軍予備学生が任官して各々の戦場で奮闘している姿を通じて、特に次々と戦死していく状態を書くことにより、敗色の濃い日本海軍等を描写しています。暗い話ですが惹き込まれます。2022/12/11
金吾
24
◎戦争が本職ではない招集された学徒たちの苦悩や青春が自らも予備士官であった阿川さんが切実に描いています。何度読んでもいい話です。2025/04/24
roatsu
12
阿川弘之さん逝く。当事者として大東亜戦争を知る方がまた一人旅立たれた。天国で先に逝った作家仲間や小説に描いた山本元帥らと会えたろうか。ご冥福を祈る。本作は自身の海軍予備学生としての経験を基に、当時の大学生達が青春と学業を振り切り国のために身を投じた戦争の中で直面する様々な経験、待ち受ける残酷な運命を彼ら自身の目線で克明に描き読者に追体験させ、戦争の惨禍に散った一世代の記憶を伝える作品群の一つ。自分が読書を通じ海軍、戦争、特攻について知る入口となった作品群で、今後も大切に読み継いでいきたいと考えている。2015/08/06
零水亭
2
阿川弘之氏の代表作と言っていいのでは?個人的には「春の城」「雲の墓標」「軍艦長門の生涯」とこの作品は新米三羽烏より好き。2019/07/11
Tatsuya Hirose
2
友人の紹介で今年の夏の課題本とした本。太平洋戦争の海軍第二期予備学生達を主人公とした物語。学生っぽさ残した彼らを主人公に置くことで青春的な描写も少しあるが、描かれているのは当時の日本軍の、そして日本のシビアな状況。日本軍の組織的な問題を示した名著「失敗の本質」の世界を現場目線で見せつけられたような気になる箇所もある。さ、次は下巻へ・・2014/09/10