内容説明
関東大震災からの復興の兆しを見せる昭和五年、東京。歌舞伎の殿堂木挽座に“掌中の珠を砕く”という脅迫状が届く。皆が疑心暗鬼にかられるなか『忠臣蔵』に出演中の花形役者が毒殺される。江戸の狂言作者の末裔桜木は、築地署の笹岡と真相究明に乗り出す。容疑者は、役者、裏方、観客すべて。だが、嘘をつくのが商売の役者を相手に捜査は難航……。変革の時代を背景に描く歌舞伎バックステージミステリー。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のぶ
73
新刊の「芙蓉の干城」が面白かったので前作を読んでみた。時代は昭和初期の、関東大震災から復興しながらも世界恐慌が発生し不景気の真っ最中。舞台は当時の歌舞伎界。当時活動の拠点にしていた木挽座に脅迫状が届き、やがて人気花形役者、蘭五郎が殺される。容疑者は当時のスタッフすべて。そんな役者たちを相手に捜査は難航する。本作は本格ミステリー小説であり捜査の過程を楽しめるのと同時に、当時の時代の世相が良く表されていて興味深い。ミステリー自体は複雑なロジックはなく、頭が疲れることもなく面白く楽しむことができた。2019/02/07
Norico
22
大震災から復興した頃の話。木挽座は歌舞伎座かな?そこに届いた脅迫状からスタートし、主役の桜木先生と仲の良かった歌舞伎役者が、毒で殺された謎を追う。世界恐慌がきっかけの不景気やアカへの弾圧など、時代の暗さが感じられる。華やかな歌舞伎界は、個性的で封建的だけど、魅力的。これから澪子はどうするのかな。最後が切ない2019/08/25
タツ フカガワ
16
関東大震災から復興しつつある昭和5年、木挽座へ脅迫状が届き、まもなく人気歌舞伎役者が毒殺される。事件解決に大学講師の桜木治郎が関わることになって……。犯人が明らかになるラストで、これまでいくつもの伏線が敷かれていたと知らされるミステリーの醍醐味を楽しみました。また松井さんの芸道ものにはよく存在感のある重鎮・偏屈・化け物的キャラクターが出てきますが、今回は荻野沢之丞ですね。2018/02/26
とし
14
読み終わった後、叙情感があふれでてくるような作品でした。舞台は昭和5年。関東大震災から復興を遂げつつあった東京は、ニューヨーク発の世界的な大恐慌のあおりを受けて大不況に陥りました。特高、労働争議などその時代を象徴する言葉がでてくるので、へー、そうなんだなど歴史をみるような気がしました。歌舞伎とミステリーの世界をうまく融合させた作品で、文章がとてもきれいでまさに芸術的でした。様々な人間模様がわかりやすく描かれていました。ラストは非常に驚きましたが、いろいろなバックグラウンドがきけて優しい気持ちになれました。2016/07/08
きょん
14
昭和初期、関東大震災から立ち直りつつあるものの世界恐慌のあおりで景気が悪くなっている日本の社会状況が、まさに現代に重なる印象。旧劇と呼ばれる歌舞伎界から新しい劇集団を作ろうとしていた花形が毒殺された謎と新旧価値観の対立が社会風俗の描写を重ねる事で少しずつ浮かび上がってくるのが圧巻だった。2016/06/29
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