内容説明
好評の久生十蘭短篇傑作選、今回の七冊目で完結。「風流旅情記」など傑作八篇。帯推薦文は、米澤穂信氏「透徹した知、乾いた浪漫、そして時には抑えきれぬ筆。十蘭が好きだ。」
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
sin
30
『風流旅情記』勇猛ではなく哀切ですらない戦時下の兵隊達のあり様、ただただ人間として在る彼らが、僕の意識の中に在った盲目的に日本を信奉する兵士や、相反して自己犠牲を持って時代に飲み込まれた個人といった既成概念を見事に打ち砕いてくれた。その人間模様には可笑しみとすら言える物が在って、ここに表現された人々からはやがて死に逝く運命の哀切より生きることの強さしか感じ取れない。それにしてもこの作品が進駐軍が監理する敗戦後だけでなく戦争中にも掲載を認められたことが驚きである。2014/10/03
らくだ
7
十蘭はやっぱり面白い!発売日からすぐに買って読み始めたのに、それまで何冊も十蘭作品を読みまくっていたので最初のページで読む気を無くしてしまった。しかし時間が経ってから読むとやっぱり面白い。この河出文庫のシリーズでは毎回素晴らしい作品が一つは入っているが、今回は「カイゼルの白書」だった。ドイツの元皇帝ウィルヘルム二世の一人称で進む話で、海老になった夢を見たり、大事な髭をうっかり切り落としてしまったり、昔の恋人が老いてしまったのを駝鳥呼ばわりしたり、やりたい放題。お茶目でくすくす笑える作品だが、最後はユーモア2014/10/02
しろ
6
☆6 河出文庫でのコレクシオン十蘭全7巻が完結。実は半分くらいしか購読していないけど、あとは地道に今後の楽しみとして読んでいきたい。戦争、海洋、民俗、そういったものを好みに描いていて、ラストと銘打つこの一冊も存分に魅力を描き切っていたと思う。マリーセレスト号などといった、実際に起きた事件もわくわくする筆致で描くし、ナポレオンなどの歴史上の人物のフォローもさすが。ひとまず満足。2013/06/16
Aminadab
5
河出7冊目。忙しくて読む時間がとれなかった。「風流旅情記」は大戦従軍記『内地へよろしく』の戦後再編集版。モルッカ諸島からアラフラ海へ徴用漁船に乗っていく。熱帯の凪、航空基地のダメダメさが心に残る。あとは洋書を見て書いた実録が多い。「カイゼルの白書」は、老残のカイゼル・ヴィルヘルム二世が亡命地オランダでヒトラーのポーランド侵攻の報道を聴きながら興奮したり妄想したりする話。1939年中にリアルタイムで書かれた珍品。「信乃と浜路」。たしかに八犬伝はあそこがいちばん面白いのだが、あまりにも原作通りか。2019/05/17
シチボル
5
私には難しい本で辞書を片手にかなりの時間をかけて読み進めました。でもほんとにそれをした価値がある本だと思いました。すっごく面白かった!青髭は怖すぎるし、信乃と浜路は切ない。もっと十蘭の本を読みたいと思った。2015/07/08
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