内容説明
英語が世界の支配語となった現代、辺境の国の言語・日本語の運命は?比較文化史の大家が広範な知見のもとに考察する、画期的な日本語論。『日本語は生きのびるか』改題・新編集版。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Haruka Fukuhara
2
新書サイズで軽い本かと侮ると濃縮された中身に圧倒される。この時代の思考枠組みから逃亡したくて古びた本を発掘してくることがあるが、この本は今の時代にありながら昔の価値観が息づいていてお得感がある。時代の変わり目なのだと思うが、(色々な区分があるだろうが自分の感覚では特に)ネットの興隆以来社会が迷走して価値観が妙なことになっている印象がある。今、少し前の時代に立ち戻って学ぶことは多いのではないか。今を追うだけでなく、前はこうだったのに今はこうだ、といった記述が多く、若輩者としては大いに勉強になる。2017/01/11
良さん
1
国際社会で生きていくためには何をどうすればいいかがよくわかる。明治の留学生たち、特に鴎外のスタンスを見直した。 【心に残った言葉】このような新時代には、自国文化に一本の足をおろし、さらに二本の足を外国の二点におろすことができる人が増えるならば、特定の一外国に傾倒するという一辺倒を回避し得るだけに、地球社会の安定的要素となり得る。(154頁)2015/06/09
OfuOfu2612
1
日本語、英語、第三外国語の三点測量。これがなかなか難しい。支配文化の周辺国である日本が、日本語のみに立脚して世界に伍して生き残ることは非現実的だが、かといって、英語受容一辺倒であっても著しくバランスを欠く。英語での発信。エリート教育。日本の古典。興味深い。母語の喪失について「人間、母語を失えば、文化的宗教的アイデンティティーをも喪失する。それは私たちが失いたくない大切ななにかなのである。」という件は、今絶滅に瀕している、抹殺されようとしている言語話者の境遇を想わずにはいられない。2015/04/12