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内容説明
文章を書くというのはどういうことか。現代における文章とはどのようなものか、また、その望ましい姿とは。――森鴎外・夏目漱石など明治の作家から、安部公房・大江健三郎・井上ひさしら現代作家まで、豊富な文例をあげながら、近代百年の口語文の歴史のあとを辿る。文章を素材にした近代日本文学史であると同時に、文章表現の心構えを分りやすく説いた、万人のための文章講座。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
きいち
27
たしか、中学時代の国語の授業の副読本、実家で見つけて読んでみた。日本のいまの小説の文章がどうやってできあがったのか、実際に書くとすればどうかイメージさせながら、頭の中に地図を作ってくれる。鴎外に漱石、自然主義に白樺派、文章の特徴とその受け取り方を丁寧に解説。◇おもしろいのは、佐藤春夫以降、いっきに解説と文例の比重が逆転してしまうこと。考えるな、感じろということ?◇今の小説、ラノベやWebの文章も含め、ここからの展開を考えてみる。頭の中を出すことが必要じゃない、文章は文章で作られる…と、つながるように思う。2020/06/29
モリータ
11
朝の神社で読んだり、歩きながら読んだり。文学部初年次生に読んでもらいたい穏当かつある水準を示した近現代の日本語史です。齊藤美奈子の『文章読本さん江』には取り上げられてたんだっけ。2016/07/07
Hatann
9
明治以降における口語文の成立の素描になるほどと唸る。文章を書くということは、考える・感じることについて再整理して話し、更に再整理して書くに至ること。明治維新の頃、話し言葉は柔軟に感覚的なものに進化して、書き言葉は漢文(=極東諸国の文明的共通語)の影響を受けて格調高いものに完成した。口語と文語の乖離を埋めるべく、新しく口語文の試みがなされ、西洋語の翻訳文を利用した。西洋文化圏の様々な普遍的な概念を翻訳するにあたって従来の普遍的な言語であった漢文の単語を使い、新旧の普遍的概念を繋ぎ合わせて文化の連続を図った。2021/09/10
嫁宮 悠
8
普段、私たちが当たり前に使っている日本語の文章も、ひと昔前までは現在のような形ではなく、多くの人たちの試行錯誤があって現在に至ったのだ、というお話。日本語の成り立ちについて知ることが、これからの文章の可能性に繋がることを示唆する内容になっている。日常、本を読む際に文体を意識しながら読むということはあまりやらないが、本書では様々な作家の文章を引用し、その特徴や背景について著者が解説を加えることで、文章をただ読むのではなく、味わうことも本の楽しみ方の一つだということを教えられた。2018/09/16
パブロ
7
久しぶりに鳥肌立った。中村真一郎をただのエロじじいだと思っていた私、懺悔です。この本、スゲ〜よ。文章読本っていうから、文章技法書だと思ったら大間違い。近代文学が築き上げた口語文の歴史を、丹念に、しかもみっちり濃密に書き表している。二葉亭四迷から漱石、鴎外から大江健三郎まで、いかに日本文学が口語文という魔物と取っ組み合って、戦ってきたかが、これ一冊で丸わかり。ヤベ〜、この本に引用されてある本、すべて読みたくなってきた。絶版なんでみんなに勧められないのが、惜しいっ! しばらくこの本は私のバイブルです。2012/06/20