内容説明
どじょうや鮒を獲り、桑の実をつんだ幼少の一日、父の亡骸が帰ってきた。哀しみに凍った日々を、臨済の寺でひたすら禅の修業にうちこんだ少年時代。日韓混血の宿命を負って、いくたびか人生の岐路に立たされながら、厳しく自己を律した青年時代。父の自裁を、母の離反を、彼は超えられただろうか――。早世した著者が、自らの精神形成を端正な筆に刻んだ、感銘深い長編自伝小説。
感想・レビュー
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遥かなる想い
163
著者の自伝的要素が強い作品である。 日韓の血を引く 自らの人生を 冷徹に描く。 感情を抑えた筆致が 逆に 哀しみを誘う。 自裁した父と 去った母…孤独な苦闘とともに ひたすら 臨済の家風に浸っていく …戦中・戦後の韓国、日本鎌倉の 雰囲気が 整然と伝わる、そんな印象の作品だった。2018/10/31
金吾
21
日韓混血の著者の自伝的な話です。数奇な人生と幼少期から教養を身につける生活が造詣の深い内面的な作品を産み出す背景だったのだなと感じました。幼少期が良かったです。2022/04/07
ジュール
8
著者の自叙伝的小説。 朝鮮の両班の家計に生まれた父、日本人の母の間に生まれた主人公。 父の家系に深く関わりあう無量寺に幼くして修行に行く。 この幼年時と少年時代が良い。 自然と身に備わった禅。 しかし父の自死により衝撃を受ける。 そして再婚した母はまだ子供の主人公を残して再婚。 この時の厳しい冬を一人で過ごしたことが、大人になっても影響する。 それと禅の師。 全体の硬質な文章が好ましい。2024/11/23
かえる
3
借りた本。立原正秋ははじめて。漢文や禅問答はわからないので読めるところだけ。良い師や友を得ることはよく生きるのに重要なのだろう。「禅は解釈ではなく会得であった」きっと、本当にそうなのだと思わされた。陶芸をするところが好きで、そばや精進料理がうまそうでいい。2013/09/11
KK
1
筆者の自伝的小説 以前読んだがあまり覚えてない。難しい漢字や仏教言葉のため時間がかかった。韓国語を少し習っているので、韓国のことが少し理解できたのがよかった。2019/12/03