内容説明
「僕が跳びはねている時、気持ちは空に向かっています。空に吸い込まれてしまいたい思いが、僕の心を揺さぶるのです」(本文より)
人との会話が困難で気持ちを伝えることができない自閉症者の心の声を、著者が13歳の時に記した本書。障害を個性に変えて生きる純粋でひたむきな言葉は、当事者や家族だけでなく、海をも越えて人々に希望と感動をもたらした。世界的ベストセラーとなり、NHKドキュメンタリー「君が僕の息子について教えてくれたこと」でも放映された話題作、待望の文庫化!
デイヴィッド・ミッチェル(英語版翻訳者)による寄稿を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
鉄之助
494
著者が13歳の時、書き上げたこの本が、世界30言語(2016年時点で)に翻訳されていたとは驚き! 現代日本作家として村上春樹に次ぐ、”世界的ライター”だということを、もっと多くの人が知るべきだとも思った。自閉症の人が自らの体と心の”不思議”を、平易な言葉で綴った稀有な1冊。時には、哲学的で美しい表現に心を揺さぶられる。自閉症の人は、「原始の感覚を残したまま生まれてきた人間」だという。時に突飛に思われる、その行動にも意味がある。「普通」とは? 何なのか、考えさせられた。「僕らの世界は美しい」ホントそう思う。2024/08/13
mae.dat
323
周りに自閉症を患っている人は居なかった事もあり、本書はタイトルだけは聞き覚えがありましたが、手にするまでは至っていませんでした。著者当時13歳。自身に起きている事象を整然と著されており、自閉症方々がどんな大変な日常を過ごしているのか、どんな助けが必要か等が良く分かりました。思考と状況判断と身体を動かす信号系等等が、分断されているみたいに思われます。もどかしい。これを機に、その後に東田さんが感じたり考えた事も知りたいので、別の本も読みます。また医療側が知り得ている知見についても知っておきたいと思いました。2024/03/21
Tetchy
250
著者の身の内に起こる様々な事柄をほとんど見開き2ページに亘って書かれています。しかし著者自身も理由としては解らず、いわゆる衝動があることがほぼ大半に亘って綴られているばかり。そしてそんな自分たちへの理解と同意を求めることが終始続きます。またあまりに多い「解ってください」の言葉は努力をしようとしている姿勢があまり感じられず、少々辟易しました。結局自閉症の家族を持つ者は気長に我慢を積み重ねるしかないのでしょうか。私自身、「困難は自分で努力して乗り越えるべき」という性格・信条故かなかなか理解ができませんでした。2017/03/22
青乃108号
247
自閉症の利用者と毎日接する仕事の俺は、常々思っていた。彼にはこの世界はどう見えているのだろう。自閉症の著者が自身の言葉で、その問いに答えてくれている体裁の本。概ねは真実の内容だろう、しかしながら彼自身、「僕の記憶は線ではなく点である」と書いておきながらその渦中にいる彼が、この本の様な理路整然とした文章が書けるとはにわかには信じられないのだ。原稿はもっと支離滅裂な、かろうじて意図が汲み取れるかどうか、程度の物だったろう。原文のまま出版された方がたとえ読みづらくはあっても切実にその訴えは伝わっただろうに。2024/11/09
へくとぱすかる
240
驚くべき本。そして自閉症についてのイメージを覆す本。内面に豊かな心の世界が広がっていながら、それを発信できない辛さに生きる人たち。当事者でなければ表現できない世界。これまで、自分で表現できる人がいなかったために、このような事実が知られていなかったことが、もはや待ったなしに思えます。親兄弟でさえわからないこの声を聞き、1人でも多く理解してもらえればと思います。2017/04/03