内容説明
計画実現を目前に窮地に陥るトレーダー。少年探偵はボットを駆使してドローンの足跡を追い、政府のシンクタンクに招かれた老経済学者は独自の理論でテロの真相に迫る。新米マーケッターはナノテクによる新たな産業革命をもたらすべく奔走し、美術商は千年都市の過去と未来をつなぐ秘密に近づく。そして、テロ現場に居合わせた青年に発現した、奇妙な幻視能力の正体とは――。人類と世界に変革を迫るのはテロか、ナノテクか、それとも言葉か? 緻密にして壮大なる近未来SFの傑作、感動のフィナーレ! キャンベル記念賞、英国SF協会賞受賞作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
わたなべよしお
21
イスタンブールを舞台にした群像劇と言えばいいのだろうが、イスタンブールは舞台であると同時に登場人物の一人でもある、と言った方が適切だ。なんと魅力的な街だろう。「蜜人」の話など、かつ一人一人の物語もそれぞれ一冊になるほどだと思う。それだけにやや食い足りないというか、もっと分量があっても良かったかもしれない。読後感はとても良い。2016/06/18
スプリント
9
終盤までの展開が非常にスローだったので最後は盛り上がったようにみえますが結末はあっさりしてます。世界観が気に入った人にはお勧めしますが上巻で見極めても問題ないです。2016/08/16
銀河ヒッチハイカー
5
等身大の近未来小説。都市SFということもありちょっとミエヴィルっぽい。同じ建物に住む6人の主人公たちによって物語られる。それぞれの行動が影響しあって進む。後半になるにつれその度合いが加速。今の世界の延長線を描いているのでSFに超技術や人類の進化や世界の真実を求める人には合わないかも。とはいえ生活に溶け込んだ未来の技術がリアルに描かれていて大満足。小説として普通に面白いこともありSFを普段読み慣れない人も楽しめるはず。2016/06/27
fukumasagami
4
《小さな文字》とアイシェは思う。小さすぎて読めない文字によって書かれた、より小さな言葉によって書かれた言葉。この部屋で、この机のところで警官のアクギュンは、細書術の力は小さくなればなるほど増すのなるのだろうかと考えた。フルフィーたちは、神の最後の名前はすべての原子に書かれていると信じた。世界は書かれている。現実は転写される。瞬間瞬間。無限に転写されて、ひょっとしたら宇宙の秘密は、人の心に刻まれているのかもしれない。2017/10/29
K.S.
1
ディテールは興味深いがストーリーが今ひとつという印象。精緻な描写は最初の方は興味深く読めるだが、この調子が続くので少々読み疲れた。2018/11/16