内容説明
1936年8月、ナチス政権下のベルリンで第11回オリンピックが開催された。ヒトラーが開会を宣言し、ナチスがその威信を賭けて演出した。その大会を撮影し、記録映画の傑作『オリンピア』二部作を生み出した天才レニ・リーフェンシュタール。著者は彼女にインタビューを試みる…。運命の大会に参加した日本選手団をはじめとする多くのアスリートたちの人生をたどる長編ノンフィクションの傑作。
目次
序章 階段から
第一章 炎は燃えて
第二章 勝者たち
第三章 敗者たち
第四章 九千キロの彼方
第五章 素朴な参加者
第六章 苦い勝利
第七章 故国のために
第八章 氷の宮殿
終章 階段へ
あとがき
文庫版のためのあとがき
主要参考文献
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
402
レニ・リーフェンシュタールが『民族の祭典』と『美の祭典』を撮った1936年のベルリン・オリンピック。それはまた、ヒトラーとナチスが総力を挙げ威信をかけたオリンピックだった。本書はその回顧的ドキュメンタリーである。沢木のペンは冴え渡り、荘厳な開会式の臨場感を映し出す。また、陸上、水上での当時の日本人選手たちを活写する。この大会はまたメディアの力をまざまざと知らしめるエポック・メイキングのそれでもあった。レニはまさにそれに相応しいし、「前畑ガンバレ!」が当時の日本人を熱狂させたのである。2021/08/25
遥かなる想い
140
相変わらず、ノンフィクションでありながら著者の想いが強く感じられる、沢木 耕太郎らしい本。ベルリンオリンピックという60年も前の素材をとりあげて一体何を伝えようとしたのか…少なくとも私には、やがて第二次世界大戦へと突入しようという、その暗い予感の中で「日本」という国家のために戦う、日本のスポーツ選手たちのひたむきな気持ちが伝わってきて、何かひどく懐かしいような感じがした。マラソンで優勝した「孫基禎など、当時の民族問題もさりげなく盛り込まれている。2010/05/19
goro@一箱古本市5/5
60
ナチス統治下でのベルリンオリンピックをドキュメンタリー映画から追って行く。評価の高い映画を見てみたい。そして「前畑ガンバレ」しか知らなかったけどその他の競技でも日本勢は活躍していた事を初めて知りました。その前畑さんにしても壮絶な練習と周囲からのプレッシャーの中、闘ったんだな。どのオリンピックでも一握りの勝者と大勢の敗者が生まれるわけだけど、それぞれの選手を追って深みのあるベルリンオリンピックを描き出す。次は「冠」を読みたいと思う。2020/09/18
kinkin
52
レニ・リーフェンシュタールとの対談がメインかと思っていたが内容はベルリン・オリンピックに参加した選手についてがほとんど。ただそれがつまらないということではなく、当時のオリンピックについて知ることも多かった。太平洋戦争に突入する前の大会のため選手の多くが戦死したり戦争によって命を落としたそうだ。ベルリンに行くまでにシベリア鉄道で何日もかけて移動したり、水泳の選手が練習のときはふんどし姿だったこと、撮影も日が暮れると別の日に再現して撮っていたというような話が多く載っていた。★★★2015/10/29
AICHAN
40
図書館本。1936年のベルリンオリンピックを演出・撮影し記録映画『オリンピア』を生み出したレニ・リーフェンシュタールにインタビューするとともに、同大会に参加した多くのアスリートたちの人生をたどるノンフィクション。丁寧に細心に正確に事実を考察する。盛り上がりはないが、淡々と考察していく力強い筆致に最後まで目が離せなかった。2021/08/10