内容説明
貧困研究は、ここまで進んだ。単純な図式(市場vs政府)を越えて、現場での精緻な実証実験が明かす解決策。
目次
目次
もう一度考え直そう、もう一度
第1部 個人の暮らし(10億人が飢えている?;お手軽に(世界の)健康を増進?
クラスで一番
パク・スダルノの大家族)
第2部 制度(はだしのファンドマネージャ;カブールから来た男とインドの宦官たち;レンガひとつずつ貯蓄;起業家たちは気乗り薄 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アキ
111
貧困は飢餓と関連しておりそれには穀物が必要であるという施策は失敗してきた。なぜなら多くの人々は、穀物よりもカロリーのない砂糖を欲するからである。汚染された水による下痢で多くの乳児が死亡するため塩素系消毒剤は安価で手に入るが、多くの貧困層の人々はそれをせず、下痢になって効果がある安価な経口補水液より点滴や抗生剤を求める。貧困を解決するためには単純な図式では計り知れない矛盾があることを多くの実例で示している。著者の一人は2019年ノーベル経済学賞を受賞したフランス人女性経済学者エステル・デュフロ。現在48歳。2021/08/11
どんぐり
76
インドとフランス出身の経済学者2人が、貧乏人(国)の食、健康、教育、家族の規模、保険、融資、貯蓄などについて調査分析した本。基本的な問いは、「貧乏な人は生活を改善できるのか、それを妨げているものは何か?それは取りかかる費用が高いのか?それとも続けるのに苦労するのか?なぜそれが高くつくのか?人々は便益がどんなものかわかるか?わからないなら何が学習の妨げになるのか?」というもの。金をばら撒くだけの「経済開発援助」は効果がない。貧乏人の経済学からは情報不足、弱い信念、問題の先送りなどの課題がみえてくる。2016/02/11
s-kozy
73
開発経済学の本。発展途上国においてpoorな人々がなぜpoorなままなのかをランダム化比較実験を用いて探る。食糧、医療、教育、家族、マイクロ融資、貯蓄、様々な分野において特効薬はないが、制度や援助、その周辺環境で効果的な方法を模索することでいつか(50年後か100年後?)はpoorな状態を克服しようという結論にかすかな希望が持てる。「大も小もいろんなアイデアを探求することで、いずれだれも1日99セント以下で暮らさなくてすむ世界に到達できるのです」(355頁)。2017/06/28
Willie the Wildcat
63
個人と制度の課題、解決策とその限界。どうにも実態と乖離のある単語や表現が腹に落ちない。確かに様々な事例が、ヒト・モノ・カネの論旨を裏付けようとしているが”心”に欠けている気がする。モノの「食」におけるカロリーの意識?カネの使い道では、どうにも先入観と価値観の押し付けが強い印象。生活の基本である衣食住。あくまで個々人の優先度の違いではなかろうか・・・。論旨を理解し切れていないのだろうなぁ。但し、最後まで読みきれたということは、その論旨に一定の現実描写があるからだと推察。う~ん、何とも嫌な世の中だ・・・。2016/07/27
空猫
35
お金持ちはお金の遣い方を知っている…とはよく聞く言葉だ。ならば貧乏人はお金の遣い方を知らない人、なのか。予防できる貧困原因は多いが、目先の事ばかりにとらわれ、それをせずに貧困のループに嵌っていたり。加えて後進国の保障の少なさ、教育を受けない事など、貧乏人に対する勝手な思い込みも詳細なデータで反証があり、多角的にとても丁寧に分析してあった。貧乏人と中流以上との差は「未来のために」働けるか否かなのだ。経済学論は難しかった(ので斜め読み)けれど面白かったです。2019/09/09